約 2,287,963 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/207.html
ハルヒ「やりたいのよ・・・!! やるわよ! どけ邪魔臭い!!ロリエロゲ!うせろ!! のれえんだよ!マイピクチャにいれすぎなんだよ! おい!!!」 キョン「・・・・。」 ハルヒ「インターネットさせろぼろPC!!!!!」 ハルヒは怒鳴るとキーボードで モニターを18回殴った ハルヒ「・・・・、始まれ!っていてるだろ!!! うせろ!SOS~!!ボロPCうぜぇぇぇええ!! ア・・ハァ・・・・・ハァ・・・・ハッ・・!」 古泉「・・・・・。」 ハルヒ「なんだよコイツ?! お絵かきチャットで荒らすな!!豚ーーーー!!!! 死ねちんかす野郎!!!」 古泉「・・・・涼宮さんおちついてください。」 古泉「ぐわっ!!」 キョン「古泉!!」 バンッ、 ハルヒ「うそだ!ふたばになんで 擬人化スレないの?! スレ立て・・すればいいのよ・・・。 ・・・・サイズが大きすぎる?! そんなばかな! イヤーーーー!! オーフォフォフォww 人生オワタ!!イヤァァァア! イヤァァオアオアオオアオ、 おあー、ゆるせねー、糞板フォーーウ!!、 SOS団の団長ハルヒが、こんな 板にやられちゃうわけ?! 私の名前はハルヒ!! サイズ小さいのupするわ! ・・・・おあ?この写真は犯罪?! 死ねーーー!! 消えうせろ!!ファック!まじうぜえええええええええええええ しねえええええええええええええええ しねええええええええええええええ みんなしにうせろもういやだあああああああああああああああああ」 古泉「・・・・。」 キョン「・・・・。」 みくる「うえーーーーーん!」 長門「・・・・・・・・」 (元ネタはキーボードクラッシャーだと思われる)
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/3339.html
「俺はハルヒが好きだ」俺の言葉にハルヒは、はっと驚いて顔をあげた。他の2人は俯いたままだ。 俺は2人に何と声をかけたらいいかわからない。「ごめん、2人共」 「キョン…」ハルヒが不安そうに俺を見る。 「親友として、これからもよろしくね、キョンに涼宮さん」佐々木は涙をながしながら微笑み、言った。ああ、よろしくな。 「お兄さん…その…」ミヨキチは泣きながらも必死に何か言おうとしている 「涼宮さんと…幸せになってくださいね」ああ、ありがとう、ミヨキチ。 その後、俺は佐々木とミヨキチに「ハルヒを幸せにする」という誓いのキスをさせられた。俺もハルヒも真っ赤だったがな。 翌日の放課後、俺は古泉と中庭で喋っていた。 「いやあ、おめでとうございます」古泉、おだてても何も出んぞ。 いつも通り答える俺に古泉は「僕の仕事が減って、長門さんと一緒に居られる時間が増えれば、それで十分ですよ」そうかい。 「誓いのキスもしたそうですね?」何でお前が知っている! 「長門さんが教えてくれました。アナタのせいで、僕も色々大変だったんですよ?」 何が大変だったんだ? 「それは禁則事項です」ニヤニヤしながら言うな、気持ち悪い。 「ちょっとキョン!何やってんの! ハルヒが呼んでいる。横には長門もいる。行くか古泉、団長様がお呼びだ。 ハルヒのところに行くと「古泉君と何話してたの?」と俺に聞いてきた。何でもないさ。 「ふーん。まあ良いわ、次の探索の日なんだけど…」 楽しそうに話すハルヒの顔を俺はずっと見ていた。「ちょっとキョン!聞いてるの!」ああ、聞いてるさ。 俺はハルヒを選んだことに後悔していない。先のことなんて分からない。きっと辛い事もある。 でも、コイツの、ハルヒの笑顔を見ていたいから俺はハルヒと幸せになる。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5452.html
2人の絶叫だけが長門の部屋に残り、俺たちは奈落の底に落ちていった 永遠とも思える落下の後、ドスンと落ちた俺は腰を打ちつけていた しかし思ったほど衝撃は少ない やれやれと思って立ち上がろうとしたら、上からハルヒが落ちてきた ぐえっ 「アイタタタ・・・・・・」 おいハルヒ、早く下りてくれ。かなり重いぞお前 「ハァ?女子に向かって重いだって? あんた、全地球人類を敵に回すつもり? それとも何よ、あたしが重いって言うの? 重い女は嫌いって事?」 いやハルヒさん それとこれとは別でしょう ただ上から落ちてきただけですから 「やっぱちょっとダイエットすべきかなー。あたしさー、最近もしかしたらみくるちゃんより重いかも知れないのよね ねえキョン、どう思う? あたしもうちょっと痩せた方がいいの?まあ・・・あんたがそう言うんなら、頑張ってみないこともないけどさ」 ハルヒ頼む 悩み事はとりあえず俺の上から下りてからにしてくれ。じゃないとお前のいい匂いで卒倒しそうだ 「ふふーん、キョン あんたもだいぶ正直に物が言えるようになってきたわね 団長として嬉しいわよ。やっとあんたが真人間になりつつあると思うとね」 ああ もう好きに言ってくれ。こうやってるのも悪くない気分だけど今はそんな場合じゃないだろ 「分かってるわよもう」 ハルヒは俺の上から飛び降りて制服のスカートを直した 「ねえ。見てキョン!あれ!」 ハルヒが指さす方向には何人かの男女が見えた もちろんすぐに正体は分かる。SOS団と佐々木の1派が争っているのだ 「行くわよキョン!急いで!」 ハルヒは猛ダッシュで駆け出し、俺は慌てて後を追いかけた。30秒ほど走ってかなり近づいた 「有希!今助けるからね!」 そう叫んで走り寄ったハルヒの体は、ゴーンという音を立ててまたもや跳ね返された ハルヒ大丈夫か?吹っ飛んできたハルヒを危うく受け止め、そっと横たえた 「いったぁーっ・・・」 鼻を押さえてうずくまるハルヒを抱きかかえながら俺はあらためて、自分が来た世界を眺めた 空にはまばゆいばかりの星空がきらめき、地面は真っ黒で何も起伏がない 明らかに地球人の常識からはかけ離れた場所だ ここから15メートルほど離れた場所で戦う者たちの姿が見えた 激しく動き回っている赤い光はあれは古泉か。この世界じゃあいつの能力も使えるらしいな 少し離れた場所で右往左往している朝比奈さんは、なぜか時々点滅していた 数秒間消えたかと思うとまた現れる そして横たわっているのは長門だ。まだ意識が戻ってないのか ピクリとも動かないその長門の足元に立ちはだかり、周防九曜と思われる長い黒髪の女子と激しい攻防を繰り返しているのは・・・ 俺の背中にまた鳥肌が立った 振り下ろされるナイフの鈍い光沢、そして脇腹に突き刺さった冷たい金属の感触が、俺の全身から冷や汗を絞り出させた あ、あ、朝倉涼子がどうしてここにいる?しかも長門を守るようにして そうか、あいつは長門のバックアップだったっけ 長門がピンチなのを見て駆けつけたのか? 周防九曜は両手の指先から次々と光線のようなものを出し、朝倉を貫こうとする 朝倉涼子はまるでそれを割り箸でも掴んでるかのように手づかみにして、さらにはボキッと折っていた 両者の攻防は互角に見えたが、なかなか朝倉は攻勢に転じられないようだった 朝比奈さんから少し離れた所には、いた!あいつがいる 顔を見ただけで殴りつけてやりたいぐらいにムカつく野郎が あの藤原が朝比奈さんに手のひらを向け、朝比奈さんの動きに合わせて小さく振っている そのたびに朝比奈さんはあちこちに逃げ回り、時折りピカッと光って姿を消す 未来人同士の戦争がどんなものなのか、もちろん俺に知る由はないが、おそらくおれはあれでものすごい戦闘を繰り広げているのだろう 赤い光と化した古泉の周囲には分散した青い光が取り囲んでいる あれは橘京子のものなのだろうか、その1つが時々古泉に向かって突進し、古泉は全身でそれを跳ね返す 青い光は力を失って地面に落下するが、古泉からも光の破片がキラキラとこぼれ落ちており、多少はダメージを負っているのが分かった 予想していた通り、激しい戦闘の真っ最中だったが、俺にとっての気がかりはいまだに目を覚まさない長門と、そして彼らから少し離れた所にいる1人の少女だった ハルヒの言った通り、やはりあの新入生だった クルッと巻き毛の天然パーマなのか、繰り広げられる戦闘に目を輝かせながら手に持っているオーパーツを軽く左右に振り回している 俺はハルヒを地面に横たえて、ぶち当たったバリヤーを調べてみた 長門のマンションを覆っていた柔らかいものとは違って、ガラスのように固い物体だった 手で叩いてみてもガンガンと響くだけで向こう側には届かない どうやらあっち側からはこちらは見えないようだ 大声で古泉の名を呼んでみても何の反応もない 俺は再びハルヒを抱え起こし、揺さぶってみた。おいハルヒしっかりしろ、大丈夫か? 鼻を真っ赤に腫れ上がらせたハルヒがウーンとうなる 「いったぁー、何よ今度はいったい」 またバリヤーみたいだな。しかも今度はえらく固いぞ 「またこじ開けて入ればいいじゃないの」 ハルヒは鼻に手を当てながら立ち上がり、俺がやったようにドンドンとそれを叩いてみた 横たわったままの長門に懸命に声をかけるが当然反応がない 「うーん、ダメねえこれじゃ」 ハルヒは何事かをわめきながらひたすらバリヤーを殴りつけ、地面との隙間に指を突っ込んでこじ開けようとしている 何とかならないかハルヒ?このバリヤーをぶち破る方法は 「それは無理だよキョン」 また後ろから佐々木の声がした。こいつもついてきやがったのか 「どうやらあっちで起こってる事はこっちからはどうしようもないみたいだね」 おい佐々木、もういい加減にしろよ こんな無駄な争いをして何になるんだよ お前はこれで満足なのか? あいつらに戦わせてお前はここで高見の見物かよ 「だってそうしろって言われたんだからしょうがないじゃないか 大将はのこのこ敵前に出ていくことはないって それが仲間の意見ならば、僕は喜んで従うね」 仲間だと?何なんだよその仲間ってのは こんな変な世界で、ハンディがある相手を叩きのめすのがお前らの戦いなのか? それがお前らの仲間なのか? 「ふふっ。キョン 僕にとっては彼女たちはまだあまりよく知らない存在だ 突然目の前に現れて神様になって下さいとか言われていくら僕でもそんな事を真に受けたりはしないさ だけどねキョン、そんな事を言っている連中でも僕を慕ってくれてるんだ それを仲間と呼んでどこがいけないのかい?」 だったらお前も中に入って堂々と戦えよ 俺もハルヒもこの中に入れろ それから長門を目覚めさせてやれ お前らの下らん神様理論なんかはどうでもいい 条件を対等にしろ 何だかんだ言いながら結局お前らのやってることは卑怯以外の何物でもないじゃないか 長門の能力が怖いから眠らせて、ブチ切れたハルヒを恐れて中に入れようともしない それがお前の仲間とやらのしてる事じゃねーか 何が仲間だよアホらしい 俺たちの団長を見てみろよ アホで向こうみずで後先を考えない事ばっかりしてるけど、あいつの仲間を思う気持ちはお前なんかには負けはしない 何が大将は奥でじっとしてろだよ うちのハルヒを見てみろ あいつなら、団員を助けるために核融合炉にでも飛び込む覚悟はあるぞ それが俺たちの団長だよ。SOS団の自慢の団長だよ 「そしてキョンの大好きな彼女だってのか?」 そうだよ 俺はハルヒが大好きだ あんなバカな女だけど、俺たちを思ってくれる気持はこの銀河系の誰にも負けはしない あれが俺の大好きな女だ 俺は1人では何もできないけどな、ハルヒと一緒ならどこにだって行けるぞ 佐々木はちょっと遠い目になった 「変わったな・・・キョン」 当たり前だろ もうお前を自転車に乗せて塾に通ってた頃の俺とは全然違うんだよ 見つけたからな。一生かけて守ってやりたいと思う相手を 「うらやましいよ、キョンが そんな風に自分を変えられた君が」 お前は自分を変えようとは思わなかったのか? 「思わなかったよ だって変える必要がなかったからね このみんなに会えるまではね。チームSOSの仲間に出会うまでは」 チームSOS?何だそれは? 「ははは 君にはまだ言ってなかったかな?恥ずかしいんだけどちょっとインスパイアさせてもらったよ。僕たちのチームだ 『静けさを大いに楽しむための佐々木のチーム』だ」 それならSOSチームなんじゃないのか?順序が逆だぞ 「細かい事はいいんだよ別に 何となく語呂がよかったからさ」 SOSの名を聞きつけたハルヒが佐々木を見つけ、両腕をブンブン振り回しながらやってきた 「ちょっとあんた、いつまでこんな卑怯な事やってんのよ。あたしを中に入れなさい。もちろんキョンもね」 「それはできないわ涼宮さん。 みんなにきつく言われてるから。あなたが入れるのは最後の仕上げだけ」 「いいから早く入れなさい!今すぐに!」 「ご自分でお入りになったら?」 「ええそのつもりよ。キョン!もうそんな女は放っといていいから。体当たりしてでも突入するわよ」 はいはい団長さま 「キョン!本気でそんな事するつもりか?」 当たり前だろ。俺は団長のボディガードだ 団長の行く所ならたとえ地獄にでもお供するぜ ましてや仲間を助けるためなんだ。SOS団に不可能はないんだよ 「キョン!そんな優等生の分からずやに何言っても無駄よ。まあ同級生のよしみもあるんでしょうけどね」 「待って!それはさせられない」 佐々木の体が大きく震え、クリーム色をしたモヤモヤした物体がハルヒの体を包み込んだ 「ちょっと!何よこれ!動けないじゃないの!キョン!助けて!」 俺は急いでハルヒを包んでいる靄の中に飛び込んだ と思ったらハルヒの体を通り抜け、反対側に出ていた もう一度やっても同じだった 俺の指先はハルヒに触れる事もなく、そのまま通過して飛び出してしまう 何だこりゃ?ハルヒ? 「キョン・・・・・・」 待ってろハルヒ、すぐに助け出してやる おい佐々木、もうやめろ。ハルヒに手を出すんじゃねえ 他のヤツラならともかく、お前にこんな事をさせたくない だからハルヒに手を出す事だけはやめてくれ 「じゃあ君が身代わりになるかい?」 ああ それでいいのなら俺は構わない 「キョン!あんたいったい何言ってんのよっ!」 ハルヒ みんなを助けてくれ 長門を助けろ、お前ならできる 長門さえ起こしてしまえばこっちのもんだ 「ちょっとキョン!」 さあ佐々木、さっさとやれ。俺を好きにしていいからハルヒを助けろ 「ふっ 君が代わってくれても意味はないんだよ あくまで団長は涼宮さんだからね」 いいから変われ 俺とハルヒを入れ替えろ 「それはできない。今の時点での危険因子は涼宮さんだからね」 くっそう 引っかからないかさすがに 俺の背後にはクリーム色の靄にからめられたハルヒがもがいている 「キョン!キョン!」 俺は佐々木を睨みつけたままで 何か策はないかと思い巡らしていた バリヤーの向こうでの戦いはいったいどれぐらいの時間に及んでいるのか 古泉も朝比奈さんも、もちろん朝倉涼子も、もうかなりのダメージを受けているはず ほとんど防戦一方の戦いにはたして勝ち目はあるのか 仮に長門が目を覚ましたとしてあの調子で戦いに参加する事はできるのか? 幾つもの疑問が頭を駆け巡る 俺とハルヒはこのまま 仲間が必死で戦ってるのを見殺しにしてしまうのか・・・ 「キョン、キョン」 ハルヒの声も苦しそうだ。俺は佐々木に背中を向け、ハルヒの方に向かった ハルヒどうした?苦しいのか? 「大丈夫よ、動けないだけ だけどキョン、こんな悔しい想いは初めてよ。何もできないで負けちゃうなんて・・・ 有希・・・ごめんね・・・一番つらい時に一緒にいられなくて みくるちゃん・・・あんなに頼りなかったのに、必死で戦ってるのに何もしてあげられなくて 古泉くんも・・・いつもわがまま聞いてくれたのに、最後はこんな形になるなんて ごめんね・・・これじゃ団長失格だよね。偉そうな事ばっかり言ってたのに 結局何もできないだけだなんて」 俺の目の奥で何かがはじけた 何か真っ赤なものがパーンとはじけた 俺はゆっくり向き直り、佐々木に静かに告げた 佐々木・・・ハルヒを出してくれ、今すぐに 「それはできないと言っただろ 君に代わっても何の意味もない事ぐらい分かっているはず」 そうか・・・ 俺は肩を落とし、力なくうなだれた そして次の瞬間、全速力で佐々木に向かって走っていた もう何も考えられない ただ無性に腹が立っていた どうせ何もできないのなら、せめてこいつだけにはひと泡吹かせてやりたい 俺をバカにしたいのならいくらでもすればいい だけどこれだけは絶対に許さん ハルヒをバカにする事だけは許さない 俺たちの団長を、俺の大好きなハルヒをバカにする事だけは許せなかった 「ちょ・・・キョン?」 俺は上体を丸めて佐々木に襲いかかった 何かを叫んでいたような気がするが覚えていない ショルダータックルをぶちかますつもりだったのだが、予定した場所に佐々木はいなかった 空気が漏れるようなシュッという小さな音が聞こえたような気がする 俺は勢い余ってそのまま突進し、バリンという音とともにもんどりうって倒れ込んだ 「キョン!」 気がつくと空気の匂いが違っていた。血なまぐさい臭いが鼻をついた 誰の血の臭いなのかと頭を上げると、目の前には小さな女の子が倒れていた これは?どんなカラクリなのか、俺はバリアーを抜けたようだった そして俺が体当たりしたのはこの子なのか 俺の横に転がっている新入生の手に握られたオーパーツを見て、俺は本能に任せて行動した 素早くその手からオーパーツを奪い取り、バリヤーの外にいるハルヒに向かって走り出した いったい今日はどれぐらい走ってるだろうか。少しは運動能力の向上に役立つだろうか そんな事を考えていると耳元に誰かの声が聞こえた 「・・・・・・とうとう来た・・・私のきれいな・・・その瞳・・・・・・」 横目でちらりと見ると周防九曜が俺の動きを追っていた 長い黒髪がブラリと横に拡がり、次の瞬間、それが一斉に俺を目がけて飛んできた 追いつかれる前にバリヤーの外にたどり着こうと必死で走ったが、恐ろしいスピードで追いかける槍のような黒髪の方がはるかに早かった 「キョン!」 「キョンくん!」 誰かの悲鳴が聞こえたような気がした 俺の耳元にシュルルルといううなりが聞こえ、今にも無数の槍に貫かれるかと覚悟した瞬間、ブシュブシュブシュと何かが突き刺さる音が聞こえた ハルヒ・・・ ハルヒ・・・ 俺は・・・もう・・・・・・ あれ?痛みがない 呆然とする俺に何か柔らかいものが覆いかぶさった 「早く渡して!」 誰かにそう言われてハッと気がついた 聞き覚えのあるこの声は、朝倉涼子! 「あなたならあのバリヤーを貫通できるはず!走って!」 俺は異を唱える事もせず、ハルヒに向かって走った 再びシュルシュルといううなりが後ろから聞こえ、俺は首をすくめた ブシュブシュブシュ 「キョンくん・・・」 朝倉・・・ 俺の体にかぶさるようにして朝倉涼子が倒れ込んできた 暖かい液体が俺のシャツを濡らす。これは・・・血? 「キョンくん・・・あの時は本当にごめんね。 自分が間違っていたことがやっと分かった 長門さんの気持ちもね」 朝倉! 「せっかく戻って来られて、キョンくんにちゃんと謝ろうって思ってたのに。またこうなっちゃった しょせん私はやっぱり、ただのバックアップにすぎないって事かしら? さようなら、キョンくん。できたら私の事は、あまり悪い思い出にしないでほしいな」 朝倉! 体中を周防九曜の長い槍で貫かれた朝倉涼子は やがていつかのようにサラサラと砂になって崩れ落ちていった 俺はオーパーツをまだ持っている事を確かめた バリヤーの側にいるハルヒからはあと少しの距離だ 俺は残りの距離を猛ダッシュに賭けた。バリヤーの向こうにいるハルヒに手渡す これが突き破れなかったら、その時は俺も終わりだ 周防九曜の槍に貫かれて、朝倉のようにサラサラと消滅する事もできず、血にまみれた無残な死体を晒すのか オーパーツを持った右手をバリヤーの向こうにいるハルヒに必死で突きつけた ハルヒ、これを持ってこっちに入って来い! 不思議な事に、オーパーツは苦もなくバリヤーを突き抜けた 佐々木が作ったクリーム色の靄すらも通り抜けて、ハルヒはしっかりとそれを握りしめた また背後からシュルシュルと唸りが聞こえてきた。身を隠せるものは何もない。助けてくれる朝倉ももういない 俺は目を閉じた そして・・・・・・ 何も起こらなかった 体中を串刺しにされる感覚も、焼けるような激痛もなかった そして俺の後ろに誰かが立っている感覚を感じた こわごわ目を上げてみると、そこには見慣れた制服姿の小柄な女子が立っていた 周防九曜が放った長い黒髪の槍を片手で鷲づかみにしていた 「ああ・・・・・・あなたは・・・ここにいてはいけない存在・・・・・・不快な・・・とても不愉快なもの・・・・・・」 周防九曜は次々と槍を繰り出し、その女子はそれを片手で受け止め続けた 見上げる俺の全身に安堵感が広がる あまりの安堵に体中がガタガタと震え出すほどだった 長門・・・・・・ ついに復活したのか長門・・・ 長門は氷のような無表情を崩さないまま あの懐かしい淡々とした口調で 「・・・・・・お待たせ」 そうつぶやいて、九曜の攻撃を跳ね返し続けていた 「・・・・・・離れないで」 長門は右手で攻撃を受けとめながら左手をバリヤーの外に伸ばした 長門の左腕が5メートルぐらいに伸び、ハルヒの腕を掴んだ バリバリバリと激しい音を立てながら、バリヤーごとハルヒを中に引きずり込んだ 俺は転がり込んでくるハルヒをしっかり受け止めた これでついに役者が全員揃った。SOS団の勢ぞろいだ どんな仕組みになってるのかなんて俺には分からない だけど今、団長以下5人のSOS団メンバーがついに終結したのだ 形勢が一気に逆転した 長門はめまぐるしい動きで周防九曜の攻撃を防ぎながら詠唱し、古泉に群がっていた赤い光を叩き落とす さらには朝比奈さんと藤原との間に白い光の壁を作った 古泉は力を回復して再び橘京子に襲いかかり、朝比奈さんは変な悲鳴を上げながら 「わ、わた、わたたたたたーっ!」 と叫んで藤原と一緒に姿を消した ハルヒがバリヤーの中に入ったのを見た佐々木も中に入ってきて、クリーム色の靄を俺たちに向かって放ってきたが、オーパーツを握りしめたハルヒが無造作にそれを踏みつぶした 俺はしっかりとハルヒの手を握りしめていたが、ハルヒはその手をそっと放した 俺たちの前でガードしていた長門の前に出た すかさず周防九曜が槍を放つが、それらは全てハルヒの手前で力なく失速して落ちた ハルヒの全身から不思議な光が発光している 古泉が最も恐れていた事態がついに訪れたのか 自分の力を自覚したハルヒが、怒りのあまりにとんでもない大暴走を引き起こそうとしているのか? おいハルヒ 危険だぞ長門の後ろに戻れ 「・・・・・・やめなさい」 ん?ハルヒ? 「もうやめなさいって言ってるのよ」 初めて聞くハルヒの低い声だ 腹の底から響くようなハルヒの重低音だった 俺はこの時初めて気がついた 本気で怒った時のハルヒは口数が少なくなるのだと 「有希、もういいわ。無事で何より」 長門も攻撃を収めた 「古泉くん、元の姿に戻りなさい。みくるちゃんも、もう帰ってきなさい」 古泉は赤い光球から人間の姿に戻り 「ふぇぇぇぇぇーっ。 7億年前まで遡っちゃいましたぁ」 と言う朝比奈さんは気絶した藤原の手を掴んで戻ってきた 佐々木率いるチームSOS(この名前は使いたくないな)も攻撃の手を休め じっとハルヒを見つめている オーパーツを奪われた新入生はキョトンとしていたが ニッコリ笑って立ち上がった ハルヒはゆっくり歩いて古泉の前に立った さすがの古泉も疲れた表情で肩で息をしていたが、近づいてきたハルヒを見てわずかに頬を緩めた しかし次の瞬間、俺の心臓も凍りついた パンと乾いた音がして、ハルヒが古泉の頬を叩いていた 「副団長がこんなつまらない争いごとに巻き込まれてどうするのよ! 私の指図もなしに独断専行は許さないわよ!」 古泉は呆然としていたが、ハルヒの目に浮かんでいた大粒の涙を見て顔をこわばらせた 「申し訳ありません、団長」 ハルヒはそのまま朝比奈さんの元に向かい、やはり頬を叩いた 「みくるちゃんはあたしのかわいいマスコットなんだから、こんな危険なことしちゃダメじゃないの!」 朝比奈さんは目をくるくるさせていたが、ハルヒに抱きしめられて大声で泣き出した 「みくるちゃん、ごめんね、無理させて。あたしが早く来れなかったばっかりにこんなひどい目にあわせちゃって」 「すっすっすっ涼宮さーん」 しばらく抱き合っていた2人だったが、やがてハルヒが体を離した 再び俺と長門の前に戻ってきて、やはり長門の頬もパンと叩いた 長門なら軽く避ける事もできたのだろうが、黙ってハルヒの平手打ちを受けた 「有希、有希、あんたはね、何でも1人で抱え込んでるんじゃないの つらかったら、1人でいるのがつらい時は電話しなさいっていつも言ってたでしょ? あたしたち仲間なんだから、どうして今まで何の相談もしてくれなかったのよ!」 抱きしめられてもまだ無表情の長門だったが、大きく見開かれたその両目から、大粒の涙がぽろりとこぼれた 「・・・・・・申し訳ない」 そしてハルヒは俺の前に戻り、俺をグーで殴りつけた おいハルヒ、何で俺だけグーパンチなんだよ 「うるさいバカキョン!あんたは全部知ってたんでしょっ! 知ってるくせに何で私に何も言わなかったのよ! あんたの責任が一番重いんだからね! 一番下っ端のくせに!一番あたしと一緒にいたくせに! あんたがもっと早く話してくれたらこんな事にはならなかったのに! 有希も古泉くんもみくるちゃんも、こんな目に会わずに済んだかもしれないのに!」 いやハルヒ これにはいろいろと事情があってだな 「黙りなさいっ!!!」 ハルヒは再び俺をグーで殴った そしてハルヒはくるっと体を反転させて佐々木に指を突きつけた 「神さまになりたいのなら好きにすればいいわ 世界を作り変えたいのならいつでもどうぞ ただし、1つだけ言っておくわ あたしの大事なSOS団員に指一本でも触れたら、今度はただじゃおかないからね! あんたがどこの世界のどんな神さまだろうと、あたしが必ず探し出してこの世から消し去ってやる!」 佐々木はしばらく呆然とハルヒを見ていたが やがてクスクス笑いだした 「さすがは涼宮さんね やっぱり私はかなわないわ ちょっとだけだけど神さまなんて言われていい気になってたのかもしれないわね ごめんね涼宮さん あなたの大事な仲間をこんな所にまで連れて来てしまってごめんなさい でも1つだけ分かってほしいの あの子は全然悪くないから あの子のために、この世界を作り直すエネルギーを分けてほしいって頼まれて それで周防さんにも協力してもらって今回の作戦になったの 責任は全て私にあります。憎むなら私を憎んで下さい だけどこの子は別だから。一人ぼっちでここで生きていくのがかわいそうだと思ったから だからこの子だけは許してあげて」 ハルヒは無邪気に笑う新入生をじっと見た 「あなた、名前は?」 「名前はまだありません」 「もう北高はやめちゃうの?」 「えっと、まだ決めてません」 「そう、じゃあいいわ。でもこれはもうしばらく預かっとくから、後で学校に取りに来なさい」 「はい!」 ハルヒはそれ以上何も言わずに戻ってきた 呆然とする古泉と、泣きじゃくる朝比奈さん、そして無表情のままで涙をこぼす長門を俺の前まで引っ張ってきた 「さあキョン、帰るわよ」 ああ これだけ暴れりゃ充分だろ 暴れ足りないのはハルヒだけじゃないのか? 「・・・キョン」 え? 「マジで殺されたいの?」 ・・・・・・ 「帰るわよ」 俺たちは輪になって手をつないだ 「みんな、目を閉じて元の世界を念じるのよ 有希のマンションのあの部屋をね」 「・・・・・・それでは不足・・・・・・終わらせない・・・・・・」 後ろから小さな声が響き、長い髪の毛を狼のように空気で膨らませた周防九曜が襲いかかってきた ハルヒの持っているオーパーツを目がけてギラギラした光の束が襲いかかる すぐに反応したのは長門だった 高速呪文を唱える余裕はなく、長門は瞬間移動でハルヒの前に立った 「有希!」 長門は小さな体を太い光に貫かれ、その目を大きく見開いている 「有希!」 「長門さん!」 長門! 「・・・・・・いい・・・・・・肉体の損傷は無視できるレベル」 周防九曜はその長い髪が大きく膨れ上がり 小柄な体を5倍ほどの大きさに見せていた 「・・・・・・ここで終わる事はできない・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・」 長門が素早く詠唱し、俺たちを包むように、白い光の壁が発生した 「早く戻った方がいい」 「・・・・・・あなたは美しくない・・・・・・この場所にはふさわしくない」 周防九曜の体もオレンジ色の光に包まれ、ゆっくりと空中に浮かびあがった すかさず長門が追従し、同じように空中に浮かんだ 「有希!もうやめなさい!もういいのよ!」 「このインターフェイスを残しておくのは危険。私が始末する」 おい長門、もうやめよう。こんなの放っといてみんなで帰ろうぜ 「それはできない。このインターフェイスは暴走を始めている」 暴走? 「そう」 「・・・・・・私は今日、習いました。言葉の意味を・・・・・・これはお花です。とても美しい・・・・・・あなたが好きです・・・・・・お前は死ね」 長門、こんなの相手にして大丈夫なのか? 「勝算はある。早く退避を」 おい佐々木、ここは危険だ。お前も全員連れて帰れ ハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも有希が・・・」 長門が勝算があるって言うんだから信じようぜ 「有希・・・」 「・・・・・・私は、歩きます。遠くのお空に。明日は、お肉を、食べました」 見守っているうちに周防九曜の様子が明らかにおかしくなっていた 第1形態が指からの光線の矢、第2形態は髪の毛の槍 とするとこれが第3形態なのか、オレンジ色の球体に包まれたその体から次々と光の束が長門に向かってほとばしった 長門は素早く詠唱しながらその光を直前で跳ね返し、返す刀でオレンジ色の光に切り込んでいった 「キョン、私たちはこれで戻る事にするよ」 ああ佐々木、ここは危険だ 「君たちも無事帰ってきてくれよ」 もちろんだとも。気をつけてな 佐々木と橘京子、そして藤原の姿が消えた おいハルヒ、俺たちも帰ろう 「でも・・・有希が・・・」 帰ろうとしないハルヒの気持ちは俺にもよく分かる ようやくハルヒにも今までの俺たちの行動が読めてきたのだろう 自分の知らない場所で行われてきた壮絶な出来事に目を丸くし、また長門を1人残しておけないという気持ちは俺たちももちろん一緒だ 上空で繰り広げられるすさまじい戦闘に、俺たちは目を奪われていた 周防九曜は次々と攻撃を繰り出し、長門はそれを防ぎながら何やら光を出して攻撃もしていた 下から見ている俺たちには戦況はさっぱり理解できない やがて飛び道具では埒が明かないと見たのか周防九曜は距離を詰め、再び黒髪の長い槍を四方八方から突き立ててきた 何本かずつまとめて払い落していた長門だったが、そのうち数本が無残に体を貫いた 「有希!」 「私は大丈夫。それより早く帰還すべき」 「あんたを置いて帰れるわけないでしょう!」 「置いて行っていい。必ず戻る」 「本当?」 「本当」 「絶対に帰って来なさいよ!有希!」 「約束する」 まだ名残惜しそうなハルヒをせきたて、俺たちは再び手をつないだ するとまだあの新入生が残っているのに気がついた。おい、お前はこっちに来なくていいのか? 「ここが私の世界ですから」 こっちは今から危険な状態になるかもしれないんだぞ 「構いません。その時はそちらの世界に行きます」 絶対生きろよ、こっちでもあっちでもいいから 「はい!ありがとうございます先輩」 「さあみんな祈って!向こうに帰れますように。・・・・・・有希が無事に帰って来れますように」 足元が激しく揺れ、時間移動とも次元震ともまた違う感覚の後で、俺たちは再び固い地面に立った 「ほわーっ」 朝比奈さんの溜息とともに、ようやく地球に帰ってきた事を実感した 出発点と同じ、長門のマンションだった。そこにはまだ佐々木たちがいた 「無事帰ってきたね」 ああ 「どんな様子だったの?」 まだ長門と周防が戦ってるよ どうやら異常動作を起こしたらしい 「本当に申し訳ない。我々の仲間なのに何もできなくて」 まあしょうがないだろ。何しろまともに会話もできないヤツだったからな 「古泉くん」 「はい?」 「みんなを連れて帰って」 「えっ?」 「みんなを家まで送ってあげて」 「しかし長門さんがまだ・・・」 「いいから!」 「はい、では後はよろしくお願いします」 古泉はまだ泣きじゃくっている朝比奈さんを抱き起こし、佐々木たちも連れてマンションを出ようとした 「ふん、結局規定事項の確認のみか、骨折り損とはまさにこの事だな」 藤原がつぶやいて立ち上がった 「俺はここで失礼するぜ。どうやらこれ以上の展開はなさそうだしな。ところであんた」 こいつは俺の朝比奈さんをあんた扱いするのか?許さん 朝比奈さんがビクッと体を震わせた 「は、はいっ?」 「つまらない任務だったけど、あんたと戦えてよかったよ」 「ふぇっ?」 「まさか7億年前に連れていかれるとは思わなかった」 「あっ、あっ、あれはその涼宮さんの・・・」 「途中で時間の流れについていけなくなった。気絶するとは時間移動員失格だな おかげさまですごいものを見せてもらった。さすがは歴史にその名を残している人物だけの事はある これは禁則だけどな」 「えっ?えっ?」 「あんたに出会えてよかったよ、朝比奈みくるさん。今度会う時は・・・その・・・禁則だ」 「へ?」 「ありがとう、大先輩」 藤原は意味不明な禁則事項を連発しながら朝比奈さんと握手を交わし、佐々木に軽く頭を下げ、俺たちを一瞥してその場から消えた 「何なのよあいつはいったい」 「わわわわたし・・・・・・」 どうやら藤原ってのは朝比奈さんよりもまだ未来の人間なのか しかしちょっと聞こえたけど、朝比奈さんが歴史に名前を残すとか 「じゃあ、あとで必ず連絡を下さい。何時になっても待ってますから」 古泉はそう言って残りの全員をまとめ、マンションを出ていった 俺は別に帰れとも言われなかったのでそのまま残っていたが、誰もいなくなるとハルヒが口を開いた 「さあキョン、もう一度行くわよ!有希を助けに」 へっ そう言うと思ってたよ団長さま どこまででもついていってやるぜハルヒ 地獄の底まででもな 俺とハルヒは手をつないで、再び長門の部屋の額の前に立った 「行くわよキョン」 ああもちろんだとも 呼吸を合わせ、まさに飛び込もうとする寸前に 「・・・・・・行かなくていい」 背後から小さな声がかかった 「有希!」 長門!帰って来れたのか? 「帰ってきた」 長門は布団をすっぽり首までかぶっていた 黒い瞳は大きく見開かれたままだ 「有希!よかった!帰ってきてくれて」 「帰って来ると約束した」 長門・・・ 無事だったか 周防はどうなったんだ? 「・・・・・・周防九曜は消滅した。暴走を止めることはできなかった」 あの新入生は? 「まだあそこにいる。でもまたこの世界に来たいと言っていた」 「本当に?有希?」 「そう。そのオーパーツを取り戻しに来る」 「これ?」 「そう。それは彼女にとってとても大事なもの」 「ふうん・・・・・・」 なあ長門 「何?」 ちょっと布団めくってもいいか? 「ちょっとキョン!こんな時に何エロ目線になってんのよっ!」 違うぞハルヒ ちょっと心配だったから 長門が傷ついてるんじゃないかと思ってな 「・・・・・・見ない方がいい」 ん? どうしてだ長門? 「通常の神経構造を持っている人間にはこの状態はかなりショックを受けるはず。だから見ない方がいい」 「有希!あなた怪我したの?どうなの?」 「肉体の損傷はすぐに再生できる。でも少し時間がかかる」 「有希・・・・・・」 ハルヒは構わずに布団をめくり上げようとする 俺は・・・すまん長門・・・ ちょっと耐えられそうになくて、思わず目を背けてしまう 「万が一にもこれを映像化しようなどという野望があるならここは自粛すべき」 長門は内側から布団を押さえ、ハルヒに抵抗していた 「医療技術者でもこの状態は正視に耐えないレベル・・・見ないで」 「有希、本当に大丈夫なの?」 「大丈夫」 おいハルヒ、長門が嫌がってるんだ、もうやめておけ 「分かったわよ・・・」 「頼みがある」 「何?有希」 「・・・・・・もう帰ってほしい」 「ん?」 「・・・・・・肉体の回復がうまく進行しない。エラーが発生している」 何か問題があるのか長門? 「情報処理にエラーが頻発している・・・・・・原因は・・・・・・禁則」 長門? それまでまっすぐ上を見つめたままの長門が首だけを横に曲げた その寸前に、大粒の涙が頬を流れ落ちるのが見えた 「・・・・・・お願い・・・・・・帰って・・・」 長門・・・・・・ ごめんな お前の気持ちに・・・・・・俺は応えてやれなかった それが・・・お前の禁則なのか? 俺の目の奥が、なぜかじんわりと熱くなってきた 長門の禁則の理由が何となく理解できる すまん長門 それでもまだ長門の布団を引っぺがそうとしているハルヒを引きずるようにして、俺は長門の寝室を出た 「有希!来週には絶対学校に来るのよ!」 「・・・・・・それは約束できる」 「じゃあね!絶対よ!」 長門 「・・・・・・・」 また部室でな 「・・・・・・・ありがとう」 俺とハルヒは長門の部屋を後にし、黙ったままでエレベーターに乗った マンションの玄関を出ると、そこには佐々木が待っていた 「ごめんなさいね涼宮さん。いろいろ迷惑かけて」 「もういいってば」 「長門さんは帰ってきたの?」 「今帰って来たわよ」 「周防さんは?」 「・・・・・・戻らなかった」 「ふうん、やっぱりか。結局私は仲間を守れなかった あなたはちゃんと全員を無事に連れて帰ってきたのにね。やっぱり私はリーダー失格か」 「そんな事ないわよ、どうしようもない事もあるし」 ああそうだよ佐々木。周防は暴走していた ああするしか方法はなかったみたいだからな あの長門がそう言ってたんだから 「だけどキョン、僕がもっとうまくやれば、その暴走を食い止められたかもしれない」 それは結果論だろ 周防は帰って来れなかったけど、後は全員無事だったんだから もうそれでいいんじゃないか? あの新入生もまた帰って来るよ。オーパーツを受け取るためにな 「そうか・・・・・・君がそう言ってくれるのなら・・・納得するよ。ねえ涼宮さん?」 「ん?」 「周防さんはいなくなっちゃったし、藤原さんは元の世界に戻った だけど私と橘さんはまだこの街にいるわ もしかしたら、また私たちが出会う事もあるかもしれないんだけど、その時は・・・・・・」 「その時は?」 「友達として会ってくれるかな?」 ハルヒはまだ怒りを含んだ目で佐々木を見ていたが、しばらくしてその目が柔らかく光った 「もっちろんよっ!一緒に冒険した仲間なんだから! これからもまた、不思議探しの旅に出るのよ!」 おいハルヒ これだけものすごい体験をしておいてまだ足りないのかよ それに北口周辺なんかに不思議が落ちてるはずないって これだけやってもまだ学習してくれないのかお前という女は 「当たり前じゃないのバカキョン これからは不思議を発見するだけじゃなくて作りだすのよ 誰かが言ってたでしょう! 『待ってるだけでは冒険は訪れてくれない』ってね!」 ほう その誰かってのはもしかしたら頭に黄色いリボン巻いて 仲間を危険にさらすのが得意な北高の女子の事じゃないでしょうね? 「それは今までの話よ!これからはね、あたしがあんたたちを守ってあげるんだから!」 やれやれ このバカの脳下垂体を解剖して、一度長門に学術調査でもしてもらいたいもんだ 「佐々木さん!あんたたちもこれからは準団員として認定してあげるから、たまには不思議探索に加わる許可を与えるわ」 「本当に?ありがとう」 「その時は新人として十分にこき使ってあげるから覚悟しときなさいねっ!」 「はい!団長!」 何だこの2人はいったい 完全に意気投合してるじゃないか 史上最悪の神様のツートップだ 1958年ワールドカップのブラジル代表チームでも勝ち目はないだろう ハルヒと佐々木はしばらく盛り上がっていたが 「じゃあ帰るね涼宮さん」 「うん、またね」 「じゃあねキョン、涼宮さんをお願い」 これ以上何をお願いするんだよお前は?もう勘弁してくれ マンションの前で佐々木と別れ、俺はハルヒと手をつないだ 7階の窓から誰かが見下ろしている気配も感じたのだが、残念ながら俺にはどうする事もできない 銀河系中の長門マニアに殺意を持たれてしまったのか それとも喜んでもらえたのか やれやれだよ全く [[リンク名 涼宮ハルヒの共学 4]] その4に続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/521.html
身体中の脂肪が自然発火して人体蝋燭化現象が起きそうな太陽を受けつつ俺は緩やかに急勾配を登っている 俺とはもちろんキョン(本名不明)の事であり何故登っているかと言うとそれはもちろん学校へ行く為だ 多量の汗を吸収し最早不快感しか与えない制服を上だけでも思いっきり脱ぎ捨てたい所だが、生憎他にも生徒が居る中でそんな事をする度胸は無い 大体何故こんなにも暑い。地球温暖化の影響ですかコノヤロー 「よお、キョン………」 今の俺には肩に置かれた手にすら殺意を覚えるな 谷口、その手を離せ。触られるだけで俺の体温が上がる 俺はチャック魔神のお前とは違って股間から熱を放出する事ができないんだ 「大変そうだねぇ?キョン」 くそっ、国木田、何故お前は汗一つかかないんだ。笑顔キャラは殆どが完璧な設定か 「まぁ、聞いてくれたまえキョン。」 知るか。俺にはお前のナンパが失敗した話など外国で誰かが転んだという報告よりどうでもいい それよりはその身体中を汗に塗れた姿を俺の眼中から消せ 谷口による『海に出会いを求めに来る奴は大抵モテない』説を聞きたくも無いのに聞いている途中で校舎へ着く事が出来た BGMが有ると多少は疲れが軽減できるのかもな。今度調べて見よう それはそうと谷口、その節はピッタリお前に当てはまるんじゃないのか? 所変わって一年五組 人は目標物だけを視界に入れることは出来ず少なくとも周囲の景色は多少なりとも入る訳で つまり自分の席に行くためには前後の席も目に入る訳だ 俺の後ろの席の奴は頬杖をして窓の外を睨んでいる それで微笑み、少なくとも無表情でも浮かべていれば絵画と見紛うほどの美しさがあるが、いかんせんその顔は眉間に皺を寄せるほど不機嫌オーラを振りまいている そう、その後ろの席の奴こそ我等が『世界を大いに盛り上げる為の涼宮ハルヒの団』通称SOS団団長にして涼宮ハルヒ 不機嫌な理由は暑さゆえだろう。時折鬱陶しそうに顔につく髪をはらっている 俺としてはポニーテール萌えなんだがな 「あたしも扇いでよ」 俺が下敷きで扇ぎだした途端それか。もうちょっと人に物を頼む態度ってもんを考えて貰いたいもんだな 「断る。今は人に尽くしてやるほどのエネルギーも惜しいんでな」 「ふん」 また不機嫌そうに頬杖をつき、時折髪を払っている 担任の岡部が入ってきた所で下敷き団扇はしばし中断を余儀なくされる 大体この暑いのに何もするなってのは拷問だよな こうして見ているだけでも暑苦しい岡部による暑さに負けるなという意味の主張は5分の刻に渡った 眼を覚ませば夕方だった 服が汗を吸って濡れている まぁ、あれだ。暑さで体力を殺がれている所に世界史だぞ?眠くならない訳が無いよな? 「…………」 誰に対するか分からない言い訳を打ち切って下校の準備をする 「やっと起きたのね」 思わずゾっとしたね 感情を憎悪だけ含めたような声だ。しかも偉く不機嫌な 声だけで人を殺せそうな者はコイツの他有るまい 涼宮ハルヒ 我等が(以下略)は俺の目の前で腕組みをしながら俺を見下ろしてる 感情で人を殺せたら俺は既に死んでいるだろうな。そんな感じだ 「SOS団の活動にも来ないと思ったらのんきに寝てるとはね……」 静かに言いはなつ うん、怒られるよりはるかに怖いな、コレは 「………同じクラスなんだから起こせばよかったじゃないくぅあ!?」 無言で脛に蹴りを入れられた お前、それは反則だろう 「………!」 抗議の声を上げようとした所を、思わず飲み込んだ だってそうだろ?普通怒っているだろう状況で今にも泣き出しそうな表情をされていたら呆気にとられるよな? まぁ、そんな一瞬の躊躇が不味かったのかハルヒは既に走り去っていた 抗議の為上げようとしていた手が虚しく宙を掴んでいる 「ヤレヤレ……貴方にも困った物ですねぇ」 教壇からいつもの如くニヤケ面を携えた古泉が現れる ―――――――いつから其処に居たんだよ、お前は 「大規模な閉鎖空間が発生していましてね。それも今日はコレで4回目です。流石に疲れてきました」 そうかい、それはご苦労なこった。で、俺に何の様だ 「何の様だ、は無いでしょう?原因は貴方にあるんですよ?」 何でだ 「前にも言ったでしょう?涼宮ハルヒさんが不機嫌になると閉鎖空間が発生すると」 そういや言ってたな。あの灰色の空間には良い思い出が無い。思い出したくも無かったよ で、何で原因が俺にあるんだ 「心当たりは無いんですか?」 全くな 「……SOS団の活動に来なかったり、乙女心を理解しない発言をしたりと色々と思いつくんですけどねぇ」 乙女心って何の話だ 「物の例えです。とりあえず、今すぐ涼宮さんに謝って来て下さい」 何故俺が謝るんだ むしろ危害を加えられた俺が謝って貰いたいんだが 「………鈍感ですねぇ。いいから行って下さい。それが無理なら実力行使しかありませんが…………」 実力行使ね。お前が俺より力が有る様には見えないがな 「お忘れですか?僕には機関の仲間だって居ます。」 含みを聞かせたようだがどうにも演技に見えるな。なんつーか胡散臭い 「そうですね、例えば………」 どうやら実力行使の内容を考えているようだが絶対に謝らんぞ、俺は 「貴方の生爪を一枚一枚剥いで指に一本ずつ針を刺し、じわじわと痛みを強めていきながら精神を弱らせ 発狂寸前の所を僕の言う事を聞く奴隷同然に仕立てあげる事だって出k「キョンッ!いっきまーす!!」 いや、本能がそうしろって伝えていたもんでね 俺は今ならカール・ルイスを越える自信すらある 背後から聞こえてくる物騒な言葉は完全無視だ、無視 でもコレは逃亡じゃないぞ?小泉の意見に耳を貸してやっただけだ。うん、そうだ 誰だって高校生で廃人にはなりたくないんでな 教室から走り出して下駄箱に来るまでに既に汗が吹き出ている。かなり不快だ でもそんな事を言っている場合じゃないな、俺の人生が掛かっているんだ。 まぁ、焦りの所為かね。俺は一つ重大な事を見落としていた 校門まで走ってようやく気付いたよ 俺はハルヒの家を知らないってことにな こんな当たり前の事に今更気付くとは俺もどうかしているな。暑さの所為か ってそんな場合ではない!このままじゃ俺廃人フラグ一直線ktkr!!! ………焦っているな。かなり焦っている 冷静になれ俺。小泉に………じゃない、古泉に聞けばいい話じゃないか! 「涼宮さんの家ならあちらですよ」 「………いつから其処にいた」 「そんな事気にしてて良いんですか? 早くしないと組織の筋肉質の猛者たちが数人やって来て毎夜毎夜の肉欲の宴、 ムッキムキ黒人男性とうh「キョンッ!発進する!」 またこのパターンか と言うか古泉、実力行使がグレードアップして無いか……? 走る、走る、走る 廃人となるのを防ぐ為!平穏な老後を過ごすため!俺は走るぞ!古泉ィィィィ!!! ………うん、暑いね 思考が現実逃避を初めつつ、やっとハルヒに追いつく事が出来た 体に纏わりつく制服は不快指数上昇すること現在進行形なわけだが、そんな事も言ってられない 「おいっ!」 叫びにも近い声で腕を掴んだ所為か、ハルヒは驚愕の二文字を浮かべている。少々罪悪感にかられるな、これは 「!?………な、何よ」 何ってそりゃあ…………うん、何だろうね とりあえず謝れといわれたが………… プライドと貞操………まぁ、天秤にかけるまでも無いよな 「………スマン」 とりあえず深々と頭を下げた 黒人マッチョとうほっ、よりはこっちの方が遙かにマシだ 呆気にとられていたハルヒの顔にいつも通りの表情が戻ってくる あぁ、コレで良かったんだよな とまぁ、今後の心配が一つ無くなった 「はいっ!活動をサボった罰ね!」 途端にコレは無いだろう ハルヒが俺に渡した紙には町内の地図と、巡回経路と書かれていた。俺の目がおかしくなければな 「………なんだ、コレは」 「だぁーかぁーらぁー、サボった罰。其処に書かれている経路を今から三周して来なさい」 マジか 「大マジ」 …………今に至って、この選択肢も間違いだった気がするな そうそう、こーいうやつだったよ、涼宮ハルヒって奴は 「いやぁ、お疲れ様です」 ▼ニヤケ面が現れた!▼ →殴る 蹴る 暴行 うほっ ………とかやってる場合じゃないな。そんな事する気力もない。最後のはやるつもりもない 「どうやら閉鎖空間の拡大も止まったようです」 それは良かったな。所で俺も今非常に不機嫌なんだが、一度殴らせてもらって良いか? 「それは困りますね。今はMPも尽きかけな仲間の援護に行かなければ行けませんから」 そうかそうか、とっとと行け。お前の姿は見たくない 「そうですか。それでは………おっと、くれぐれも涼宮さんの機嫌を損ねないで下さいね?」 言われなくともさ 俺だってマッチョに貞操を捧げたり廃人にはなりたくない。将来やりたい事もあるんでな とりあえず今は、この巡回経路とやらを回るのがベストなんだろうな………… まぁ、思いっきり後悔する羽目になったけどな ただ座っているだけでも汗が吹き出る暑さの中、町内を回っていると少々自殺願望すら出てくる もし体型に困っている人にはお勧めだ。精神を削る代わりにやせる事が出来るぞ …………なんてな すっかり暗くなったが別段涼しくなる訳でもなく昼間と同じく暑い。嫌がらせか 目前にその姿を見せる我が家。中では妹がアイスを貪っている事が容易に想像できるな。殺意を覚える そんな事に気を取られていた所為か、街灯で照らされる我が家の戸の前に人影が有った事には暫く気付かんかったがな どうやら私服に着替えたらしいその人物……… 「………ハルヒ?」 そう、我等が(中略)団長涼宮ハルヒ そういえばハルヒってだけ聞くとホスト部も思い出すな。どうでもいいが それより、そのハルヒが何でうちの前にいるかっ、てのが問題なんだよな 「!?キョ、キョン!?なんでここに!?」 「いや、なんでも何も此処は俺の家なんだが」 「そ、それもそうよね…………」 何だ?夢遊病の症状でも出たのか?……いや、夢遊病ってのは子供とかに発祥するんだっけか 「あ、あたしはアンタがサボらずやってるかと思ってきただけよ」 いや、何もきいて無いですけど 「うるさい!それより、ちゃんと回ったんでしょうね!三回!」 それは俺の状態から察してくれ。後、声を小さくしてくれ。 「フ、フン………!まぁ、いいわ。ちゃんと回ってきたみたいだし」 ご理解いただけて光栄ですな 「とりあえず、あたしはこれで帰るk「あれ?キョンくん、お友達?」 妹よ、いつの間に出てきた ってかハルヒ、見る見るうちに顔色が悪くなっていくんだが……… 「キョン………」 何だ 「こんな小さい子を連れ込むなんて、アンタまさかロリコn「妹だ」 「……何でこうなってんの?」 「さぁな」 今俺はハルヒと向かい合って正座している状態にある。何故かって?ほら、元凶がやってきたぞ 「さ、どうぞ~粗茶ですが~」 あぁそうだ。俺の妹(本名やっぱ不明)が元凶だとも 帰ろうとしたハルヒを引きとめなし崩しに家に上げた妹は好奇の眼差しでハルヒを眺めている ハルヒの方というとこれまた不思議な事に妙にしおらしい いつもの如く城の明かりを一人で補えそうな輝きを放つ太陽の様な歓喜ではなく美しく咲いた花のように見るものを幸せにさせる微笑である う~ん、詩人だねぇ ハルヒのこんな様子を見たのは何時だっけな………そうだ、朝倉の転校の理由を探りに行った時だったな こいつもこんなにしてりゃ可愛いのにな。谷口曰くAランクプラスは伊達じゃない…………か 「………何見てんの?変な事考えてたらブッ飛ばすわよ」 感情が顔に出てたか?ソリャ行かんな、どうやら俺はポーカーフェイスが苦手らしい にしても何時にも増して怪訝な目つきだな。其処まで信用無いのか、俺 「まぁいいわ、あんたに何か出来る度胸があるとはおもわな」 い、と続けようとしたんだろうな。まぁ、どの道聴こえなかったが 唐突に、雷が鳴った 「……嘘」 ハルヒが小さく呟いている。ソリャそうだろう 先程まで快晴―――夜でも快晴って言うのか?―――だった空には台風でも来たかのように雨雲が敷かれ、雨に交えて雷まで降り注いでいる 多分この雨の中帰る事は不可能だろう。俺の目で見ても明らかだ 「ねー、ハルにゃん泊まっていきなよ」 「え、」 何か色んな感情をごちゃ混ぜにしたような声だったな。其処まで嫌か 所で妹よ、いつの間にそんな略称で呼べるほど仲が良くなったんだ? ハルヒが成すがままに引っ張られていくと、俺の携帯が鳴った 液晶画面に表示された文字には嫌な予感を覚えざるを得なかったがな 「………古泉」 『はい、何でしょう』 「また閉鎖空間がどうとか言うんじゃないだろうな」 『いえ、寧ろその逆……でしょうか』 逆? 『ええ、この転校は恐らく涼宮さんの望んだ事でしょう。恐らく彼女は何かこうまでしてしたい事が有るのではないでしょうか』 大雨を呼んでまでしたい事って何だ。結果といえば家に帰れなくなったぐらいだぞ しかもそのお陰で俺の家に泊まる事になってしまってるしな。悪い方にしか転がってないように思えるが 『………ホンット鈍感ですね。貴方は』 知るか。大体溜息混じりにそんな事を言われる筋合いは無いぞ 『まぁいいです。とりあえず涼宮さんの機嫌を損ねないように気をつけて下さい もしそんな事になったら貴方のこれからの人生を黒人6白人4の割合で密着されて過ごしてもらいブツッ!!』 最後に雑音が混ざったのは少々強くボタンを押しすぎた所為だな 風呂場のほうから、妹の楽しそうな声とハルヒの悲鳴が聞こえた 「天空×字拳!!!」 ボスッと言う音と共に俺の体は多少の熱気を帯びたベットへと沈む。なぁに、やってみただけさ それにしても今日は疲れたな、精神的にも肉体的にも。ぐっすりと眠ることができそうだ 「………」 背中に違和感を感じるな。別に霊感の類が俺に有るとは思っちゃいないんだが………… 「ねぇ、キョン………」 扉を少し開けてハルヒが目だけを覗かせている。目目連か、お前は しかし見ようによっちゃ体を隠してるようにも見えるな 「笑ったら死刑だからね」 そう言ってハルヒは扉を開けた。俺はお前の姿を見て笑う要素があるのかが疑問だがな とまぁ、そんな疑問は一瞬で解決された その姿は見慣れてはいるんだが見慣れていないというかソイツが着る事がありえないと言うか 解説が面倒だから今起こったことを有りのままに話すぜ ハルヒがメイド服を着ていた き、気の迷いとか夢オチとかじゃねぇ……もっと恐ろしい物の片鱗を味わったぜ……… 「…………」 「…………」 両者、当然の如く絶句。何だこれは?なんか言った方がいいのか? その思案をどう取ったのか、先に口を開いたのはハルヒの方だった 「あんたの妹に服剥かれたから仕方なく来てるのよ。これしか持ってなかったし……」 剥くって。というか常時メイド服を携帯してるのか、お前は 「うるっさいわねー………クリーニングに出そうとしてただけよ」 ああそう。じゃあその格好にはつっこまないでやるよ。これ以上いじったらまたニヤケ面から脅しが入るかもしれんからな 「で、何か用か」 「…………!」 おや。何気ない発言のつもりだったが何かが癪に障ったんだろうか。ハルヒの顔がゆっくりと紅潮していく。謝った方がいいのか? 「わ、私はただあんたが眠れてるかどうか確かめに……団員の健康管理も団長の役目なのよ!」 そうかい、それは初耳だよ。生憎雷で眠れなくなるような精神はして無いし、あんたの無茶な罰ゲームのお陰でぐっすりと眠れそうだとも ピシャァンといった感じに、雷が鳴った 「!」 「うおっ!?」 いやぁ、心臓が止まるかと思いましたね ハルヒが、俺に抱きついていた 「げふぅ!?」 この奇声は俺の物だ。だって仕方ないだろう?運動部で普通にレギュラー取れる奴が腹に思いっきりタックルして来たんだ。 いや、抱きつきなんだけどな 握力×スピード=破壊力らしいしな。後一つ何か有ったっけか まぁとりあえず俺はハルヒから加えられた運動エネルギーで後方のベットへと倒れこんだ訳だ。頭が痛い 「………ハル、ヒ?」 自分の腹部辺りに顔を埋めているハルヒに目を向けてみた。少し肩が震えている こんな女の子らしい面を普段も出せば可愛いもんなのにな それはさておき………どうするかねこの状況 「………悪かったわ」 ハルヒが顔を上げた。いやぁ、俺としてはもうちょっとこうして居たかった………いや、変な意味じゃないぞ。か弱い女の子を慰める為だ、ウン 「………雷、怖いのか?」 どうやら逆鱗に触れてしまったらしい。俺の顔の横からボスッ、と拳をベットに叩き付ける音がした ハルヒが顔を近づける。このままキスで来てしまいそうなほどに………変態みたいだな、俺 「…………悪い?」 怖いんですが、ハルヒさん なるほど、ハルヒは雷が嫌いなのか。また一つ知識が増えたな。それはそうとやっぱりホスト部を(以下略) それじゃあどの道この天候じゃ帰る事が出来なかった訳ね。GJ、GJだ妹よ ………止めた、現実逃避しても何にもならん。とりあえず俺の目前で今すぐ俺を殺しそうなこの団長様を落ち着かせねばな もし殺気だけで人が殺せるのならば俺は既に死んで………あれ、コレ前にも言ったな 「まぁ、落ち着け、ハルヒ」 と言うわけで説得を試みる。コイツをこのままにしておくとあのニヤケ面から黒人マッチョを召還されかねない 「雷が怖い事なんか気にするな、うん、その方が女の子らしくて可愛いと思うぞ、俺は」 ふっ、こんな事もあろうかと………思っていたわけではないが、谷口の話す『女性のおだて方』を伊達に聞き流してた訳じゃないぜ いや、駄目だよな聞き流してちゃ しかしどうやらハルヒも段々落ち着いてくれてる様子。谷口、お前案外役立つな。チャックさえちゃんと閉めればもてるかもよ 「まぁ、いいわ………」 ミッションコンプリート!トラトラトラ!我奇襲に成功セリ!!!我奇襲に成功セリ!! ・・・・・・・よし、落ち着け俺。素数を数えて落ち着くんだ しかし世の中そんな訳にも行かないんだな 「その代わり………一緒に寝なさい!」 「はぁ?」 いつもの如く、ビシィっと指を刺す 「団長を守るのは団員の役目でしょ!」 いやぁ、それも初耳だわ てか一緒に寝るって添い寝か?健全な女子高生にしては危機感が足りないのではないかね? もしかして人が混乱する状況が続くのにはなんかの因果関係があるのか? 今度長門にでも聞いてみるか。俺が理解できるとも思えないがな などと一般論を組み立ててみた物の ………正直、たまりません まぁそんなこんながあって俺は今ハルヒと添い寝中なわけだ 添い寝といってもハルヒは布団を頭まで被って俺の胸の辺りに顔を埋めているがな 雷の音が何処かでする度に肩が震えるのは愛おしさを感じずには居られない ………………とは言ってみたものの、このままでは俺の理性が持つかどうかが疑わしい 落ち着け俺。素数を数えて落ちつ……ける訳がない 生憎俺は同級生が成り行き上宿泊する事になり挙句の果てに一緒のベットで寝るというそれなんて(ry な展開には免疫が無い 谷口なら何か対策を練れそうだな。まぁプラスに転がる事は十中八九とは言わず十ありえないだろうが 「…う……うぅ………」 ふとハルヒの声が聞こえた。声といっても出来るだけ声を抑えようとした泣き声だってのは俺でも分かる 其処まで怖いのか、雷が 「えーと、ハルヒ、大丈夫だ。俺が付いてるから」 言った後に思ったが何が大丈夫なんだろうな 年頃の少年少女が一緒に寝ているというのは雷よりはるかに危ないと言うのが一般論という物だろうに それはそうと今俺が言ったセリフは思い返してみるとかなり恥ずかしい事を言った気がする。まぁ、仕方が無いよな。状況が状況だ。不可抗力と言う奴だよ 「…………ずるい」 ハルヒが顔を上げると同時に俺の胸ぐらを引っ張った あ、そんな勢い良くすると頭ぶつかr ゴンッ ………ほらな 「ずるい!不公平よ!」 ハルヒの言う事が一回で理解する事ができないのは既に規定事項と言った所か。ハルヒの目に溜まってる涙が痛さの為か怖さの為かは区別できんな で、何が不公平なんだ 「私はっ……!いつも……!あんたの事……!かんがえ…!のに……!」 泣くのを我慢しながら無理矢理声を出している事は俺にだって解る。その前に今驚くべきは内容のはずだ 考えている?ハルヒが?俺の事を? 「…………いつの間にかっ……あたしは………あんたの事ばっか想ってるのに…………なのにっ!」 ハルヒの瞳から涙が一粒、流れる ―――ああ、そういうことか これがどういう事かは馬鹿でも解る。俺が解るくらいだからな 「なんで………あんたはっ、落ち着いていられるのよ……!今だって………私は………!」 声を無理矢理出そうとするハルヒの様子は―――不謹慎かもしれんが―――反則的なまでに可愛い。ポニーテールだったら襲ってたかもしれないな でも今は、この消えてしまいそうに儚げな………折れてしまいそうなほどにか弱い団長様を包んでやる 俺は、ハルヒを抱きしめた 「!?」 「…………平気な訳、無いだろ」 聴こえるかどうかも微妙だったが、精一杯絞り出した声だ。それでも伝わったと思える そう、平気な訳が無かった。コレでもさっきから煩悩を消す為に余計な事を考えるのに集中していたんだからな 「俺だって、ハルヒが好きだ」 我ながら芸の無い告白だとは思ったがな。シンプルイズベストって言葉もあることだ、問題は無いだろうよ 俺の腕の中でハルヒは微動だにもしなかった。 ……………妙に沈黙が怖い しかし、以心伝心と言う奴だろうか。ハルヒのやらんとする事が解り、抱いている腕の力を緩めた ハルヒは横になった状態で器用に上へと登ってくる 俺の唇に、ハルヒの唇が重なった 「……ん…………」 ハルヒの口から小さく声が漏れる 唇を重ねたまま、数秒か、数十秒か、数分か………時間の感覚が無かった 唇を離すと、いつもの様なハルヒの笑顔が其処にはあった その笑顔に惹かれる自分を自覚し、自分がやはりこのお方に惚れている事を自覚する それでも照れ隠しにと、俺は声を発する 「…………これで俺はお前の彼氏、って事か?」 ハルヒの笑顔に合わすように少し笑いを含んだ声で聞いてみた。今はコレでいいはずだ 案の定、ハルヒは笑顔を崩すことなく…… それも何処か嬉しそうな声で答えた 「そう、ね………そう名乗る事を………許可してあげ、る………」 そう言った後、ハルヒがベットへ崩れる 緊張が解けたのやら安心感やらが要因か、直ぐに寝息を立て始めていた。その寝顔が何処か嬉しそうに見えたのは気のせいじゃないだろう、多分 その寝顔を見ていると何か悪戯をしてやりたくなったが……どうやら俺も限界な様だ 精神的にも肉体的にも疲れたしな。寧ろ今まで良くもったものだ それでも襲ってきた睡魔に軽く抵抗した 「………オヤスミ」 俺は小さくそういって、ハルヒの頬に唇を当てた。何故唇にじゃないかって?俺もそれなりに恥ずかしいのさ その行為が活動限界点だったか、俺は睡魔に身を任せて瞼を閉じた 「ってきまーす」 そういって家を出る。昨日の天候が嘘だったかのように快晴だ しかし降り注ぐ太陽光線は熱気を届け熱気はいまだ残る湿気に熱を蓄えその熱をゆっくりと放出せいでじめじめとした暑さが続いている 回りくどく言ったが兎に角暑い 早くも玉のような汗をかきつつ、俺は太陽への呪いの言葉を呟き続けた。傍から見れば変な奴だな、こりゃ 「キョーンッ!」 制服を取りに帰っていた団長殿がやってくる その表情は湿気も吹き飛ばすように溌溂としたものだった。見る者を安心させる笑顔、と言った所か。性格さえ知らなけりゃな 因みに迎えに来てもらったのは俺の要望ではない。そこん所勘違いしないように そんな事を考えて居ると、ハルヒが俺の腕に抱き着く。オイ待て、何処のバカップルだ、これは 「いいじゃない、恋人になったんだし。問題は無いでしょ」 視線が痛いな。それだけで精神に大ダメージだ と、言おうとしたがハルヒの笑顔を見ているとその気力を削がれる いや、別に無気力になるわけじゃないぞ?何となく認めてしまうといった感じの方だぞ? とりあえず今は暑さに負けない様、胸を張って歩かせてもらうよ なんてたって、この団長様の彼氏な訳だしな――― end
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/5258.html
※オリジナルキャラ・ある意味BAD END注意 これは世の中を安全に生き抜く方法を教える……、 1人の女子高生の物語である。 部室 ハルヒ「ねぇ、キョン」 キョン「んー?」 ハルヒ「――……やっぱりいいわ。」 キョン「えー?なんだよー。」 ハルヒがもじもじしている。 ハルヒ「だって~はずかしいんだも~ん。」 キョン「気になるじゃんかよ――。教えてくれよ――。」 ハルヒ「しょうがないわね~~。も~~。じゃあ言うよ~~。」 キョン「うんうん!」 ハルヒ「え~と、実は~、この学校は~、…」 するとハルヒは、急に真面目な顔になり、 おそろしいことを言った。 ハルヒ「あと3分で爆発する!!」 キョン「…」 キョンは何が何なのかわからない様子。 突然、学校が大きく揺れた。 ゴゴゴゴゴ キョン「!?」 ビーッビーッ 地震のように、大きく揺れる中、警報音がとどろき、 『爆発まであと3分! 爆発まであと3分!!』 キョン「うわああああああぁぁぁ!?」 キョン「ちょ…、ちょっと…!!ホントに爆発するのか!?」 キョン「なっ…、何でこんなことになったんだよ!!」 キョンはハルヒに問いただす。 すると彼女は、 こう言った。 ハルヒ「ひまつぶしにコンピ研の部室入り口の近くにある、 自爆スイッチを押したから」 キョン「物騒なモン学校にとりつけてんじゃねーよっっ!!」 ハルヒ「というわけで今回は私が! 学校が爆発しそうなときの逃げ方を教えてあげるわ!!」 キョン(…なんか、初めてだなこーゆー展開……) キョン「と…とにかく細かい事はいいから…、 さっさと逃げようぜ!!」 キョンは走り出したが、 ハルヒ「待ちなさ―――――いっ!!!」 ドロップキックを食わされた。 キョン「おひょ―――――っ!!!!」 ハルヒ「あんたそんなカンタンににげちまったら…、 380万円もして自爆スイッチを買って設置した意味が ないじゃないの!!」 キョン「高ぇな自爆スイッチ!!」 ハルヒ「いい? 爆発まであと3分…、 まあ1分あれば脱出は可能…。 …とゆーことは…、 あと2分は遊んでいいということよ―――っ!!」 キョン(余裕だ――――――っっ!!) ハルヒ「そうと決まったら、ババ抜きでもして 遊びましょう!! 新入部員の高橋君も連れてきたから!!」 高橋「あっ、どうも」 キョン「こんなときにオリジナルキャラ 登場させてんじゃねーよっ!!」 キョン「もうっ!!早く逃げるぞ!!」 するとハルヒは、窓の方に指をさして 言った。 ハルヒ「逃げるならあの窓が近道よ!!」 ハルヒはキョンの体をひょいっと持ち上げて、 キョン「ちょっ、…ちょっとハルヒ!!」 ハルヒ「えいっ!!」 その窓のほうに投げた。 キョン「うわっ!!」 キョンの体は窓枠にスポッと入った。 キョン「…、」 ぐっぐっと手を壁に押し上げても、窓から抜け出せない。 キョン「抜けねえぇぇぇぇ――――――っっ!!!」 ハルヒ「だっ、…大丈夫――っ!?」 キョン「うわ――――っ、ハルヒ、早く抜いてくれ―!!」 『爆発まであと1分。爆発まであと1分。』 ハルヒは一生懸命、顔をこわばらせながら、 キョンの体を引っ張っている。 ハルヒ「ぐううう~…。」 そんな姿を見てキョンは キョン「も…もういいよ!!ハルヒだけでも逃げて!!」 ハルヒ「ふざけないで!!ここでキョンを見捨てるくらいなら、 死んだほうがマシよ――――っっ!!」 キョン「ハ…、ハルヒ」 キョンの目から一筋の雫がたれた。 ハルヒ「く、…くそぉ…っ、ふぎぎぎぃっ!!」 ハルヒ「うおおおお、おあああああっ!!」 ハルヒ「無理。」 キョン「………」 キョン「!?」 キョン「まてー!!クソ団長―っ!!アホ―ッ!!」 ハルヒ「うっさいバーカ!!あたし一人だけ助かるんだもんね。ぐはははは!!」 『爆発まで30秒前!』 ハルヒ「ふっ……30秒もあれば楽勝で逃げられるわね。」 『29、28、27、26、25、24、23………ゼロ!!!!』 ドカーーーーーーーーン!!!!!!!! ハルヒ「ありゃーーーーーっっ!?!?」 グラウンドにはキョンとハルヒの2人の遺体があった。 そこにザッザッと誰かが歩いている。 それは高橋だった。 2人を見て高橋、持ってるマイクを片手にこう言った。 高橋「これぞ必殺!!!!!!『タイムワープ』!!!!!!!!」 糸冬 元ネタ『家が大爆発じゃっ!』
https://w.atwiki.jp/haruhioyaji/pages/151.html
ハルヒ名作子供劇場「アルプスの少女ハルヒ」 「さあ、みくるちゃん、あの火の輪を飛びなさい!」 「わ、わたしはヒツジじゃありません、ヤギですぅ それ以外にいろんなところが間違ってますっ。あ、長門さん?」 「私はヤギ」 「じゃあ、あんたは小さくて白いからユキね」 「ふえ〜ん、そっちは原作どおりなんですねぇ。少しうらやましいですー」 「じゃあ、ユキ、あの火の輪を飛びなさい!」 「あくまでも、そこは既定事項なんですねー」 「……許可を」 「よし、やっちまえ」 「あ、キョン君。キョン君は何の役なんですか?」 「“ヤギの大将”と“おじいさん”の二本立てです。この後、ハルヒと両手つないでぐるぐる回らなきゃならないと思うと憂鬱で」 「さあ、キョン。さっさと干し草のベッドを作りなさい!!」 「やれやれ」 「アーデルハイド、スープは音を立てずに、にょろーんと飲んじゃうっさ!」 「鶴屋さんは、ロッテンマイヤーさんですか?」 「そうだよっ! っていうか、みくる、さっさと着替えて車椅子に乗るっさ!」 「え、え、ということは、わたし、クララさんの役ですか」 「このメンバーで、朝比奈さん以外にできる人はいませんよ」 「って、古泉、お前は何だ?」 「クララさんの父親のゼーゼマン氏らしいですね、おそらくは」 「来たわね、ゼーゼマン。あんたの正体はお見通しよ! フランクフルトで銀行家、あんたユダヤ人ね!」 「ハルヒ、それ、いろんな方面的にまずいから」 「おお、クララが、クララがいきなり立ちました。なんとお礼をいって良いか」 「お礼なら、アルムの山と……」 「お礼なら、あたしに言いなさい!!」 「お前、何もしてないだろ!?」 「したわよ、火の輪くぐりとか」 「おい、シャミセン。おまえ、ヨーゼフの役か?」 「け、けだものにょろ!」 ………おわらないが、つづかない orz
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2727.html
乙女ハルヒ日記1 乙女ハルヒ日記2 乙女ハルヒ日記3
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/753.html
学年末試験、ハルヒの叱咤に少しは奮起した甲斐があってか、 進級には問題のないくらいの手ごたえはあった。 ハルヒのやつは 「この私が直々に教えてあげたんだから、学年三十番以内に入ってなかったら死刑よ」 とか言っていたが、今まで百番以内にもはいったことがない俺にそんな成績が急に取れたら詐欺ってやつだ。 それよりも試験という苦行からようやく解放されて、 目の前に春休みが迫っていることに期待を募らせるほうが高校生らしくていい。 なんだかんだでここに来てから一年たっちまう。 二度とごめんな体験含めて普通の高校生にはちと味わえそうにない一年だったが、 学年が上がればハルヒの奴ともクラスが変わるだろうし、 ようやく少しはまともな高校生活が送れるかもしれない。 席替えの時のジンクスもあるが、さすがにそれはクラス替えではないと信じたい。 いや……お願いしたい。 とまあ、俺はすでに学年が上がった後のことばかり考えていたが、当然そうでない奴もいた。 当然、涼宮ハルヒである。 終業式の三日前、朝のHR終了間際に担任の岡部が発した言葉から事が始まった。 「あー、一つ忘れてたことがある」 と、岡部はこちらの方を見た。 まさか、成績か? 試験できてなかったのか? 自信がそこそこあっただけに内心冷や冷やだったが、岡部が発した名前は意外にも俺の後ろに座る奴の名前だった。 「涼宮、連絡があるから昼休みに職員室に来るように。以上だ」 大抵この時間も机に突っ伏して寝ていることが多いハルヒは、 急に電源の入ったロボットのように顔を上げるとハルヒらしくもない意外な顔をしていた。 「あたし?」 「そうだ。昼休み都合悪いのか?」 ハルヒの若干の視線を感じたが、俺はあえて後ろを向くことはなかった。 「別にいいわよ」 「……それじゃ授業の準備しとけよー」 ハルヒにタメ口で話されることにも岡部は慣れたようで、若干煮え切らないような複雑な表情で教室を出て行った。 そして案の定、ハルヒは俺の襟を掴むと自分の方に強引に振り向かせる。 「なんだ?」 「ねえ、何で私が呼び出しくらってるのよ」 「知るか」 「問題になるようなことした覚えもないわよ」 それはお前の常識内での問題であって、学校側にしてみれば大問題な行動を取っていることを理解してくれ。 屋上から豆を撒いたり、どう考えても問題行動だからな。 それにしてもだ。 今まで生徒会がいちゃもんをつけてくることがあっても、教師側から特別ああしろこうしろと 言ってきたことはほとんどない。 逆に言えば、ハルヒが教師のところに突撃していくことは何度かあったはずだが。。 「ま、行けばわかることよね」 ハルヒはそう言うとあくびをして再び机に突っ伏した。 昼休みになるなり、ハルヒは教室を飛び出していった。 少しして弁当を持って谷口がやってきた。国木田も一緒だ。 「そういえば、涼宮さん呼び出されてたよね。岡部に」 「あいつが教師に呼び出されるなんて中学時代じゃそんな珍しいことじゃなかったけどな」 谷口がハルヒの席について弁当を広げ始める。 「高校生になってちったぁましになったかと思えば、結局呼び出しか」 「でも、最近そんな大騒ぎしてたっけ? キョンは心当たりないの?」 心当たりなんて数え始めたらきりがない。 「キョンもすっかり涼宮色に染まっちまったからなあ。感覚が麻痺してるんだろ」 それは否定し難い事実だが、お前に言われるとやはり腹が立つ。 「でも、そろそろクラス替えだから涼宮さんとも別々になるのかな。キョンは一緒になりそうだけど」 「俺も早くあの迷惑女との同じクラスから解放されたいぜ」 「誰が迷惑女よ」 いつのまにかハルヒが横に立っていた。 突然の登場に谷口は口の中に入れていたものを軽く噴出した。 「もう終わったのか?」 「何が?」 「岡部に呼び出されて行ったんだろ? 何の話だったんだ」 ハルヒがキョトンとした顔で俺を見る。 数秒の間、妙な沈黙が流れたが、 「別に大したことじゃなかったわ。……そこあたしの席なんだけど」 谷口は慌てて席を立ち上がるとハルヒは澄ました顔で席につき、購買で買ってきたパンをかじり始めた。 「お咎めはなかったみたいだね」 国木田が小声で言う。 良いのやら悪いのやら。 最もこいつに説教したところで聞く耳を持つはずがないのは周知の事実だろうし、 ハルヒの言うとおり大したことじゃないんだろう。 正直なところ戻ってきてまた大騒ぎするんじゃないかと思っていたぐらいだから俺は安心していた。 昼食を終えて談笑していると、ハルヒが突然席を立った。 「用事を思い出したわ」 そう言い残して教室を出て行く。 しかし戻ってきてからのハルヒは機嫌が良いというか、妙に大人しかったな。 谷口もそれを感じたのか、ハルヒの席に再び座りまた三人での会話が始まった。 そして、昼休み終了間際にハルヒは戻ってきた。 教室の入り口まで来て、自分の席に谷口が座っているのを見て明らかに表情が変わった。 谷口は国木田と話をしていて、ハルヒが席の横にきて谷口の目の前をハルヒの脚が通過するまでは笑っていた。 「谷口、あんた誰に断ってあたしの席に座ってるわけ?」 「す、涼宮」 「さっさとどきなさいよ!」 飛び上がるように谷口が席を立つと、ハルヒはドスンと腰掛けた。 同時にチャイムが鳴り、谷口と国木田は各々の席に戻っていった。 「あーもー、岡部の奴むかつくわ」 「大したことじゃなかったんだろ?」 全く毎度毎度、その感情の起伏の激しさには平伏するね。 「何であんたが大したことじゃなかったなんて知ってるのよ」 まさかこいつはさっきここで話していたことすら忘れているんじゃないだろうか。 便利な頭だな。ぜひ俺にも分けて欲しいぞ。 「まあ、大したことじゃなかったけど。こんなことでいらいらするのも馬鹿らしいわね」 そう言ってハルヒは頬杖をつき、物憂げに窓の外を見たままその日の放課後まで口を利くことはなかった。 放課後のSOS団の活動も、これといってやることがなく。 インターネットでサイト巡りをしていたハルヒもしばらくして飽きたのか、さっさと帰ってしまった。 せめて学年が上がるまではこういう時間が続けばいいと思っていた。 しかし、俺のハルヒに対する期待が一度も叶えられたことはなく、そういうときに決まって妙なことに巻き込まれるのだ。 もう慣れたけどな。 翌日、早起きした俺は妹の目覚まし攻撃を受ける前に着替えを済ませていた。 「あー、キョン君早起き!」 と騒ぐ妹を尻目に朝食をとり、さっさと学校へと向かった。 昨日、部室にやりかけの宿題のノートを置いてきてしまったのだ。 せっかく試験は上手くいったのに、宿題を忘れましたなんて格好がつかないからな。 そういうことで律儀にも早起きしたわけだ。 さすがに早かったのか、学校への道で登校している生徒をほとんど見かけなかった。 部室のカギを取り、誰もいない校舎を部室まで歩いていると部屋の前に誰かが立っていることに気づいた。 それは意外にも、 「お前、何してるんだ?」 「キョン……」 ハルヒだった。 こんな朝早くから、部室の前で一体何をしているんだろうか。 まさかよからぬことを考えて朝一で登校してきたんじゃないだろうな。 「…………」 しかし、ハルヒは無言だった。 軽く俯いていて目の焦点も微妙に合っていない。 「部室、入るのか?」 「……うん」 こんなしおらしいハルヒを見るのは初めてである。 雰囲気がいつもと違うというか、そういえば昨日も昼休みに同じようなことがあった。 突然戻ってきたかと思えば、自分の席に座っていた谷口に対しても優しかったしな。 部室に入り、ノートを広げて宿題の続きをしようとしたのだが、 俺は中々集中できなかった。 いつもなら誰に遠慮するまでもなく入ってきて固定席である団長椅子に座るハルヒが なぜか机を挟んで俺の目の前、いつもなら古泉が腰掛けるであろう席に座っているのである。 今更宿題なんかやってるの? とまた言われると思っていたのだがそれもなく、 ただ単に座っているだけなのである。 これを奇妙といわず、何を奇妙と呼ぶのだろうか。 俺は寒気すらした。 そんな妙な空気の中、俺から声をかけることもできず、どうにか宿題に集中しようとした矢先、 ハルヒの口が開いた。 「ねえ」 なんだ? 「その……」 ハルヒがはにかむように唇を噛む。 「SOS団、よね」 何が言いたいんだこいつは。 「あたし、団長なのよね?」 なんだその?マークは。 お前が勝手に主張して名乗ったんだろうが。 「そう……あのさ、あたしこれからどうすればいいんだろう」 開いた口が塞がらないというのはこのことである。 頭でも打ったのか、はたまたあまりに都合のいい物忘れをするハルヒの脳が反乱でも起こしたのか。 まるで自分が何でここにいるの? と言わんばかりのハルヒの表情である。 「どうするって言われてもな。すまないがお前が何を言いたいのかさっぱりわからん」 「あたしにもわからないの。どうしてここにあたしがいるのか」 「お前、頭でも打ったのか?」 ハルヒは首を横に振ると俯いてしまった。 なんというか、こういうハルヒも悪くないと俺は一瞬思ってしまった。 黙っていれば朝比奈さんにも負けないくらいの美少女だし、 いつものハルヒを見ている分、そのギャップに魅力を感じてしまったのだ。 いつもおかしいとはいえ、これは本格的におかしい。 そんなハルヒに掛ける言葉も見つからず、時間だけが経過していった。 俺はそのうち長門が来るだろうと踏んでいた。 長門ならきっとハルヒの身に何が起こったのかわかるはずだ。 そんなことを思案していると、今まで俯いていたハルヒがはっと顔を上げた。 そして廊下のほうを見るといそいそと立ち上がり、部屋を出て行ったしまった。 制止の言葉を掛ける暇もないくらい素早かったので出て行ったドアを呆然と見るしかなかった。 そして、十秒後くらいにドアが再び開いた。 長門だ。 「よう」 相変わらずの無機質な顔でちらっと俺のほうを見て、長門は席について本を取り出した。 「ハルヒに廊下で会ったか?」 本に目を落としたまま長門は小さく言う。 「会った」 「変わったところはなかったか?」 「……ない」 長門がないというならないのだろう。 といつもなら納得するところだが、今回ばかりはそれをすんなりと受け入れるわけにはいかなかった。 「涼宮ハルヒに対して異常は確認できない」 それは情報統合思念体が言ってるのか? 「情報統合思念体と私の見解」 それじゃ、おかしいと思ったのは気のせいってことか。 「気のせい」 絶対と言い切れるか? その言葉に長門は目を落としていた本から顔を上げ、 「絶対」 と一言だけ言い再び目を本に落とした。 こいつが絶対と言い切るぐらいだ。間違いないんだろう。 しかし……俺は涼宮ハルヒという人間に対して果たして絶対という言葉が当てはまるのかとも思っていた。 長門を疑うわけではない。 むしろ信頼している。 しているが、それ以上に……まあいいだろう。 もし異常な事態になったらどうにかしてくれるだろうし、俺がハルヒのことでこんなに気に病む必要はないのだ。 今大事なのは宿題であり、授業までほとんど時間もないということに気がついた俺は、 長門に頭を下げて宿題の答えを教えてもらうことにした。 教室に戻ると、ハルヒは席についていた。 そして、俺の姿を確認するやいなや近寄ってきてネクタイを締め上げると、 「キョン、いいこと思いついたわ。今日の昼休み、一緒に来なさい!」 部室で見たようなしおらしさの欠片もないハルヒがそこにいた。 本当にわけのわからない奴だ。 そしていいことってなんだ。またよからぬことを始めようってんじゃないだろうな。 「春休みに合宿やるのよ! 今度は山よ! 山!」 なぜ山なんだ。 「海は夏に行ったからに決まってるじゃない! 海の次は山でしょうが」 頼むからその安易な考えで俺の寿命を縮めるようなことをするのはやめてくれ。 山はスキーで行ったじゃないか。 「どこが安易よ。それにスキーと登山は違うわ。昼休みに古泉君のところに行って 山を所有してる親戚がいないか聞いてみましょ!」 あいつに頼んだら世界中に親戚が現れるぞ。 「何言ってんのよ。きっと吊り橋でしかいけないような洋館があるはずよ」 やれやれ。こいつの頭の中はそれしかないのか。 うずうずしていたハルヒは昼休みになるなり俺のネクタイを掴んで走り始めた。 俺の言葉なんて聞こえちゃいない。 古泉のいるクラスまで来ると、古泉は教室の中で友人達と食事を取っている最中だった。 しかし、ハルヒと俺の存在に気がつくと席を立ち、廊下まで出てきた。 「どうしたんですか? お二人で」 ハルヒは満面の笑みで 「古泉君、山を持っている親戚はいないの?」 古泉は初めは的を得ない顔をしていたが、そのうちいつものニヤケ面になる。 「確かいたような気がします。山を所有していて、別荘を持っている人が」 「さっすが古泉君。副団長の名前は伊達じゃないわ!」 おいおい、ハルヒよ。 さすがに怪しいと思えよ。 そんなにほいほいと山だの島だの別荘だのを持っている親戚がいる人間がいると思うか? 「それに比べてあんたは本当役に立たないわね」 ハルヒが横目で俺を睨む。 だったら初めから一人でここにくればいいだろ。 「あんたは私の下僕なんだから、団長様のお付をするのは当然でしょうが」 そもそも俺はお前の下僕になった覚えは一度もない。 「細かい男ね……そうだ、みくるちゃんと有希にも知らせてくるわ!」 ハルヒはそう言うと足早に去っていった。 「涼宮さんらしいですね」 全くだ。 「さて今回はどんな趣向を用意すればいいでしょうか」 余計なことはしなくていい。 普通に行って普通に帰ってくればいいんだ。 そろそろあいつにもわからせてやらないとな。 面白いことや不思議なことはそうそう簡単に起こらないってことを。 「涼宮さんのことが心配なんですね」 どうしてそうなる。いつ俺がそんなことを言った。 「素直じゃないですね。あなたも、涼宮さんも」 勝手に言ってろ。 「それより、お前昨日ハルヒと会話したか?」 「昨日……ですか?」 古泉は思い出すように顎に手を当てた。 「廊下で一度お会いしましたね。それと放課後部室で。会話という会話はちょっと……」 「どこか変だとは思わなかったか?」 「別段変わらず、いつもの涼宮さんだと思いましたけど」 そうか、ならいいんだ。 「どうかしましたか?」 どうかしてるのは俺の方かもしれないな。 「最近は閉鎖空間も安定しているので僕としてもうれしい限りです。 それほどあなたと涼宮さんの関係も安定しているということですから」 そういうセリフを吐くときのお前の笑顔は忍ぶに耐え難いものがある。 「喜ぶべきことじゃないですか。みんなが救われるんですから」 喜べないていないのは俺だけな気がしてきたぞ。 「しかし、山に行くことが決まった今、また一仕事できましたね。どうです? あなたも企画に参加してみませんか?」 断る。 怪しげな組織の手伝いなんてごめんだからな。 俺は普通の人間として普通に生活したいんだ。 「それは残念です。それでは、また放課後に」 古泉が教室の中に戻っていったので俺も教室に戻ることにした。 その前に、とトイレに寄ろうとしたところ階段付近にハルヒが立っていた。 「もう行ってきたのか?」 「キョン……」 まただ。しおらしいハルヒ。 一体何だ? 本格的に頭がおかしくなっちまったんじゃないだろうな。 「なあお前……」 と言いかけたところで何者かに手を掴まれた。 その手が目の前にいるハルヒ本人だということを理解するのに俺は数秒の時間を要したわけだが。 ハルヒが俺の手を、ましてや学校の中で繋いでくるなんてありえないことである。 「お、おい」 「お願い、助けて……」 朝比奈さんならともかく、ハルヒから一生聞くことはできないだろうと思っていた言葉が聞こえてくる。 俯いていてわからなかったが、ハルヒの目には間違いなく涙が浮かんでいるように見えた。 とりあえず、だ。 ハルヒを部室に連れてきたのだが、同時に昼休みも終わってしまった。 こいつが助けてなんて言い出すのは後にも先にもなさそうだからな。 一時間くらいさぼっても損はないだろう。 とりあえず間が持たないのでお茶を煎れてみたものの、相変わらず美味しくない。 朝比奈さんの入れてくれるお茶に慣れてしまったせいもあるのだろうけど。 ハルヒといえばお茶に手をつけるでもなく、口を開くでもなく、俯いたままである。 「とりあえず、何があったのか話してくれないか? すまんが俺にはお前が助けを求めるなんて考えられないんだ」 ハルヒは少し顔を上げるとゆっくりと口を開いた。 「私は、涼宮ハルヒで、ここの生徒で、SOS団の団長」 一つずつ確認するようにハルヒは言葉を繋げる。 「キョン、みくるちゃん、有希、古泉君、この4人がSOS団メンバー」 俺はハルヒの言葉を黙って聞いていた。 「それに谷口や朝倉、担任の岡部……学校の人間はわかるわ。でも……」 ハルヒはまた目を伏せ、スカートの裾を握りこんでいる。 「涼宮ハルヒのことはほとんど知らない」 「お前がその涼宮ハルヒだろうが」 「私も涼宮ハルヒだけど、涼宮ハルヒはあたしだけじゃない」 まるで要領を掴めん。 涼宮ハルヒだけどハルヒじゃない。 どんな冗談だ。笑いどころが全くわからん。 「あたしだけじゃないの。もう一人の涼宮ハルヒは今教室で授業を受けてるわ」 「ちょっと待て!」 俺の制止の言葉にハルヒは体をびくっと震わせた。 「どういうことだ?」 「……あたしにもわからないの。どうしてここにいるのか。どうしてもう一人涼宮ハルヒがいるのか」 少なくともハルヒはこんな冗談を言う奴ではない。 こんな回りくどいことをしたりもしない。 「ちょっとここにいてくれ」 俺はハルヒを置いたまま部室を出た。 廊下で教師に会わないかびくびくしながら教室に向かい、ドアの小窓からそっと教室の中を覗いてみると、 確かに涼宮ハルヒがそこにいた。 シャーペンを鼻の頭に乗っけて退屈そうにしている姿は間違いなくハルヒである。 そして、部室に戻るとそこにもハルヒはいた。 俺は落ち着こうと椅子に座りお茶をすすろうとして、手が震えていることに気づいた。 そりゃそうだろう。 同じ人間が二人いるのである。しかもハルヒ。 まともな人間なら失神ものだ。 状況を整理しようと大きく息をついてみる。 もう一人のハルヒ。 理由はともかく、こんなことができるのはSOS団のメンバー関連しか思いつかない。 長門、あいつはハルヒに異常がないということをはっきりと言いきっていた。 別の情報統合思念体が動いたとも考えられるが……。 古泉、これは除外だ。 場所限定の超能力者にこんな芸当ができるとは思えん。 それにあいつの組織だってまさかクローンなんかを作り出す技術があるとは考えにくい。 朝比奈さんはどうだ? 未来人ならクローンなんて作れそうなものだが。 考えれば考えるほど怪しくなってくる。 「キョン……あたし、どうしたら……」 ハルヒが懇願するように言う。 頼むからそんな迷子の子犬みたいな目で見ないでくれ、調子が狂う。 「とりあえず、どうしてここにいるのかもわからないんだろ?」 小さくハルヒは頷く。 「SOS団のメンバーに聞いてみるしかなさそうだ。すまんが俺には何がどうなってるのかさっぱりわからん」 するとハルヒは慌てて首を横に振った。 「だ、だめ! あたし、SOS団の団員には知られたくないの……」 俺も一応団員なんだけどな。 「あの三人は駄目……怖いの」 俺は先日の出来事を思い出していた。 ハルヒが岡部のところから戻ってくる前、長門が部室にやってくる前、 まるで二人がやってくることがわかっていたように出て行った。 「キョンだけは……いいんだけど……」 そんな言葉をハルヒから聞けるとは思ってもみなかったぞ。 なぜ俺だけはいいのか。 今はそんなことはどうでもいいか。 あの三人に相談もできないとなるとどうにも打開する方法がないわけだが。 「ここにいる理由もわからないんだろ? 俺だけじゃどうにもできないぞ」 「そうだけど、会いたくないんだもん」 なんだこのわがままっ子は。 「大丈夫だ。あいつらのことは俺が保障する。危険はない。もしあったとしたら俺がなんとかするさ」 「……本当に?」 ハルヒが上目遣いで見上げてくる。俺は思わず目を逸らしてしまった。 「とにかくだ。その姿はどうにかならんのか? しかも学校の中にいるなんて目立ちすぎる」 「一応変えられるけど、このほうが目立つ気がする」 そう言ってハルヒが目を閉じると、体が赤い光で包まれた。 どこかで見た光だった。これは……閉鎖空間で見た古泉が変えていた姿と似ている。 ハルヒはちょうどピンポン玉くらいの大きさになって声を挙げた。 「こんな感じ。これはここに来たときからできるってわかったわ」 さすが俺だ。 もうこんなことぐらいでは驚かなくなった。 放課後までこのハルヒにはその姿のまま鞄の中に入ってもらうことにした。 SOS団の活動は春の山登りについて話し合った。 話し合ったといっても、ハルヒが一人で喋って一人で決めただけで、 俺や朝比奈さんはいつものようにそれに従うだけなのだが。 活動が終わり、俺はハルヒ以外の三人に少し残って欲しいとこっそり伝え、 ハルヒが帰ってから再び部室に再集合した。 「あなたが我々を集めるなんて珍しいですね」 古泉が肩を竦める。 「それで、お話とは?」 「とりあえずこれを見てくれ」 俺が鞄を開けると、中から赤い球体が現れて目の前で静止した。 そして、その球体はみるみる内にハルヒの姿に変わっていく。 「ふう、狭かった」 さすがの古泉もこれには驚いたようで珍しく眼を見開いている。 朝比奈さんは状況を理解できないのか、オロオロしているだけだ。 長門はいつものように微動だにしないが。 「これは……一体何が?」 古泉の視線に耐え切れなくなったのか、ハルヒが俺の後ろに回りこんで隠れてしまった。 俺は初めから順を追って説明した。 朝比奈さんも話の流れからようやく事態を理解したのか、深刻な顔つきになる。 「……ということなんだがな。心当たりがないか?」 三人とも心当たりがないのかしばらく黙っていた。 一番初めに口を開いたのは長門だ。 「涼宮ハルヒの存在は一つだけ。情報統合思念体はそこにいる涼宮ハルヒを認識していない」 つまり、ハルヒが二人いるということはありえないということか。 「そう。認識できないから、どういう存在なのかもわからない。こんなことは通常ありえない。 情報統合思念体も戸惑っている」 長門の表情がどこか不安げに見えるのは気のせいだろうか。 朝比奈さんと目が合うが、首を横に振る。 「ごめんなさい。私にも心当たりがないんです」 その間もハルヒは俺の背中を掴んで隠れているだけだった。 沈黙が続いたが、古泉がようやく口を開いた。 「長門さんにも朝比奈さんにもわからない。そして、僕にも正直わかりません。 しかし、先程の光は……我々が良く知っている光です。 ヒントはどうやらそこにあるようですね」 そうだ。今のところ、俺もそれぐらいしか心当たりがない。 「これは、涼宮さんが作り出したものかもしれません」 ハルヒが? 自分自身を? 「ええ、理由はわかりませんが、こんなことができる人間が涼宮さん以外にいると考えられますか? 彼女は無意識に世界の改変を行うことができるんです。だとしたら、そう考えるのが妥当でしょう」 確かに、古泉の言う通りかもしれない。 この三人に心当たりがないのであれば、後はハルヒしかいないのだ。 しかし、なんだって自分と同じ姿の人間を作り出す必要があるんだ? 「最近の涼宮さんは昼にも話しましたが非常に安定していました。 閉鎖空間も今はほとんど活動していません。 つまり、涼宮さん自身が不快な気分になったわけではないということです。 私たちより、あなたのほうが心当たりがあるんじゃないですか?」 俺に心当たりがあればとっくに思い出してるだろう。 最近あったことと言えば、あいつが珍しく岡部に呼び出されたということぐらいだ。 不快に感じることではないというならそれだって除外されるだろうしな。 全くわからん。 「えーと、涼宮さんでいいんでしょうか。他に何かわかることはありませんか?」 古泉が背中に隠れているハルヒに話しかけると、ハルヒの手に力が入る。 「わ、わからない。気づいたらこの世界にいて、廊下に立っていたから」 「ふむ。とにかく、涼宮さんとの接触は避けたほうがよさそうですね」 当たり前だ。 日常的に不思議なことを探しているあいつがもう一人の自分がいるなんて知ってみろ。 この世界がどうにかなっちまいそうだ。 「とりあえず様子を見ましょう。今は情報が少なすぎます。 長門さんも時間が経てば何かわかるかもしれませんし」 「あ、私もちょっと調べてみますね」 朝比奈さんがちょこんと手を挙げる。 とりあえずその日は解散することにしたが、ここで大きな問題に気がついた。 このハルヒをどこに置いておくかということである。 姿を変えること以外は人間と何ら変わらないのだ。 とりあえず朝比奈さんか長門の家に置いてもらおうとしたのだが、 このハルヒ、それをどうしても嫌がるのである。 さすがに俺もハルヒが潤んだ目で拒否をするとそれを強要することができなかった。 「あなたの家に連れていくのが一番だと思いますよ」 古泉がさらりと言いやがった。 うちは普通の家で家族だっているんだぞ。 「姿を変えることができるなら、そこまで難しいことではないと思いますが」 じゃあお前が連れて帰れ。 「残念ながら、僕では役不足ですよ。涼宮さんもあなたの側にいたいようですし」 昨日はどうしていたのか聞くと、学校で過ごしたんだそうだ。 風呂もない食事もないでひもじい思いをした、とハルヒが言う。 これで俺が断ったら悪人みたいじゃねえか。 「仕方ないからいいけどな。家では俺の言うことを聞いてくれよ? 女子を家に連れ込んで泊めてるなんてばれたら学校に行けなくなるからな」 ハルヒは静かに頷いた。 帰り道、長門と朝比奈さんは用があるとかでさっさと帰ってしまったので 古泉とハルヒの三人で帰ることになった。 と言ってもハルヒは俺の鞄の中に納まっている。 本物もこれぐらい大人しければいいんだけどな。 「僕は元気のいい涼宮さんもいいですけどね」 その相手をするのは俺なんだぞ。もうちょっと俺に気をつかってくれ。 「もちろん、使ってますよ。でなければ、その涼宮ハルヒを調査のために連れていってるかもしれません」 鞄の中が動くような感覚がする。 「お前……」 「冗談ですよ」 古泉は肩を竦めて微笑む。 お前の冗談ほど悪趣味なものはない。 「でも、放っておけないのも事実でしょう? 涼宮さんがそうであるように、あなたも涼宮さんに対してただならぬ感情を持っている」 いつかハルヒに土下座させたいとは思っているけどな。 「はは。あなた方のそういうところも僕は好きですよ」 なんだ、気持ち悪い。男に好きだといわれても全然うれしくないぞ。 お前だとなおさらだ。 「我々はあなた方の味方ですよ。そして仲間でもあります。 仲間のことを思うのは悪いことじゃないと思いますが」 古泉は微笑みながら手を振って帰っていった。 家に帰りつくと、妹が玄関までやってきた。 「あ、キョン君、さっきハルにゃんから電話があったよ!」 ハルヒが? 何で携帯に電話しないんだ。 「携帯電話の電源が入ってないって言ってた。帰ってきたら電話しなさいだってー」 そういえば電話の電池が切れてたんだった。 俺は部屋に戻るとハルヒに電話をかけた。 『遅い! どこほっつき歩いてたのよ!』 悪かったな。誰のおかげでこんな時間になったと思ってるんだ。 『まあいいわ。それよりあんた、明日ちょっと付き合いなさい』 どこにだよ。また宝探しでもやるつもりか。 『違うわよ。合宿で必要なものを買いに行くわ。どうせ祭日だし、暇なんでしょ』 ハルヒに暇じゃないと言って納得された試しがない。 『十二時に駅前、いいわね?』 そう言って電話は切れた。 やれやれ。 そして、まだ安心できない不安要素が俺にはあった。 鞄の中にいるハルヒである。 部屋には妹も平気で入ってくるから安心はできない。 ハルヒの姿になったところで俺も気まずいことこの上ないのだ。 しかし、風呂にもいれなきゃいけないし、問題は山積みだ。 この借りはいつか返してもらうぞ、ハルヒ。 とりあえずこの日は近くの銭湯に行くことにした。 ほとんど利用することはなかったが、この辺なら知り合いと出くわすこともないだろうし 家の風呂を使うよりはよっぽど安全である。 家を出るとき妹が自分も連れて行けとごねたが友達と行くから我慢しろと抑えて出てきたのだ。 銭湯の近くでハルヒの姿に戻し、終わったらここで待つように伝えて俺も銭湯に入っていった。 平日ということもあり客の姿もまばらで、これなら平気だろうと安堵した。 俺も疲れていたがゆっくりとお湯につかることもなく、少し早めに外で待つことにした。 待つこと十五分、ハルヒが出てきた。 「お待たせ」 ハルヒには俺の服を貸したので、かなりだぶだぶだった。 それにしても……風呂上りでリボンをつけていないハルヒを見るのは久しぶり、いや初めてだった。 まだ艶のある髪に、少し赤くなった頬。さすがというか、その美少女っぷりに俺は一瞬目を奪われてしまった。 「キョン?」 「あ、ああ。帰ろう。とりあえず……ここで姿変えるか」 「もう少し、このままでいたい。お願い」 「家の近くまでだぞ」 そう言うと、ハルヒは満面の笑みで頷いた。なんだろうか、この気持ちは。 いつものハルヒに慣れているせいか、こういうハルヒの態度が一瞬でも可愛いと思ってしまった。 いかんいかん。これの本物は馬鹿!とかドジ!とか俺に連呼するような女だぞ。 そんなことを考えていると、ハルヒが横から顔を覗き込んできた。 「ねえキョン。キョンと涼宮ハルヒはどういう関係なの?」 どういうって、ハルヒ曰く俺は下僕だそうだけどな。お前のほうが詳しいだろ。 ハルヒの感情とかある程度わかったりとかしないのか? 「わからない……でも……」 ハルヒは少し俯いて、意を決したように俺の顔を見上げた。 「あたしは、キョンのこと好きだよ?」 「遅い! 罰金!」 集合時間に遅れてしまった俺にハルヒは言った。 昨晩のもう一人のハルヒの発言を思い出す。まさに今目の前にいるこいつと瓜二つの奴に言われたんだよな。 ぼーっとハルヒの顔を見ていると、胸倉を掴まれた。 「キョン、あんたたるんでるわ。団長として情けないわよ」 本物にもあのぐらいのしおらしさがあってもいいと思うんだがどうだ? このハルヒもらしいっちゃらしいが、どう考えても損をしていると思うのだが。 こういうふくれっ面も悪くはないが、俺としてはおしとやかな子のほうがいいぞ。朝比奈さんみたいな。 どうだ? ハルヒ、考えなおしてみないか? 「さっきから何ぶつくさ言ってんのよ」 ハルヒは俺の胸倉を揺さぶりながらがなり立てていたが、そのうちその手を離すとそっぽを向いてしまった。 「まあいいわ。さっさと行くわよ」 こいつにしてはやけにあっさりと引いたな。 とはいえ、こいつの顔を見る度に昨夜のことを思い出してしまってどうにも落ち着かない。 余談ではあるが寝る時は姿を例のものに変えてもらって布団の中に入ってもらった。 しかしどういうはずみなのか、俺が夜中に目を覚ましたら人間の姿になっていた。 しかも俺の目の前で眠っていた。 ハルヒの無防備な寝顔を目の前で見て俺は動揺した。 俺も健全な高校生である。性格を除けば美少女という取りえのある涼宮ハルヒの寝顔を目の前にして 何も感じないわけではない。 普通なら目が覚めたら美少女が隣で寝ているなんておいしいシチュエーションではあるが、 それはあくまで時と場所が大事であり、寝ぼけ頭の俺でもこんな姿を家族に見られたらどうなるかぐらいわかるわけで、 急いでハルヒを起こすと姿を変えてくれと懇願した。 ハルヒは中途半端に起こされたことでもう眠れないと言い出した。 そんな中で俺も眠れるはずがなくたわいもない会話をしていたのだが、朝方になって俺は耐え切れず寝てしまい、 起きた時にはすでに集合時間が迫っていたというわけだ。 家にいてもハルヒに振り回され、外に出てもハルヒに振り回される。 これでいいのか? 俺よ。 「ところで、あの三人は?」 ずんずんと進むハルヒの後ろから半分寝ながら歩いていた俺は、 他のSOS団員がいないことに今更ながら気づいた。 「今日は呼んでないわよ」 意外である。SOS団としての活動するときは必ず全員に声をかけていたと思ったが。 まあ古泉は俺と同じ荷物持ちだとしても朝比奈さんというマスコットがいないというのは結構でかい。 無償で働くのだからそれぐらいの恩恵が必要なのだ。ハルヒはマスコットと呼ぶには程遠いからな。 確かに目立つという意味ではある意味マスコットなのかもしれないが。 「そんなにたくさん買い物するわけじゃないから、あんただけで十分なのよ」 それじゃ一人で行けばいいだろうに。 「なんで団長のあたしが荷物を持たなきゃいけないのよ。あんたは平の団員なんだから荷物持ちって決まってるでしょ。 休みの日だからっていって職務怠慢は許されないわ」 ハルヒは後ろを振り向くこともなくずんずんと商店街を進んでいく。 途中、映画のときにお世話になった電気屋に入っていくのでついていくと、 電気屋の店主と何やら会話を始めた。 俺は会釈だけしてハルヒの後ろに突っ立っていたが、 「おっちゃん、ここは火炎放射器ないの?」 お前は山で一体何をするつもりなんだ? 山火事でも起こす気か。 大体こんな町の一電気店に火炎放射器が置いてあるわけないだろ。 おっちゃんもこんな女子高生の言うことなんて適当に流しておけばいいのに、 「火炎放射器はないなあ。チャッカマンじゃ駄目なのかい?」 と真面目に相談に乗ろうとしている。 「チャッカマンじゃ駄目なのよ。もっとこう火がガンガン出る奴がいいわ」 ハルヒの無理難題に本気で悩んでいるおっちゃんが段々気の毒に見えてきたのは俺だけではあるまい。 俺がハルヒに 「あんまり無理なことを言うなよ」 と言うとハルヒは頬を膨らませた。 「あんたは黙ってなさい」 へいへい。やっぱりこいつ可愛くねえ。 俺がそんなことを考えていると、ハルヒは手を振って 「おっちゃん、また来るわ」 と言って軽く手を振ると外に出ていってしまった。 俺も会釈して外に出ると、ハルヒは腰に手を当てて突っ立っている。 今日のハルヒはやけに引き際がいい。そう、気持ち悪いくらいに。 「次はこっちよ」 ハルヒは俺の袖を掴むとずんずんと歩き始めた。 その後はおおよそ山とは関係ないような店を夕方まで散々付き合わされたあげく、 夕飯を少し高めのレストランで奢らされることになった。 買い物という割には何を買うわけでもなく、当然俺は荷物を持つこともなかった。 ハルヒの奴は一体何がしたいんだ。財布の中を見て溜息をつきながら俺は家にいるもう一人のハルヒを思い出していた。 まさかハルヒの姿になって家族と出くわしていないかとか、夕食が遅くなって腹を空かせていないかとかそんなことだ。 どちらにしろ今の俺はハルヒのことを考えざるを得ない状況になっているわけだ。 古泉が言うような特別な感情だとかは放っておくとして、こいつの強烈なインパクトのせいで 俺はどうやらそのペースに乗せられちまったようだからなんとなく放っておけないような部分はあるのかもしれない。 こうしてこいつが笑顔で美味そうに食事をしているのを見ているのも悪くはない。 谷口が聞いたら 「キョン、お前はついにそこまで落ちちまったか」 とか言われるだろうな。 しかしまあ、こういうのも悪くないと俺は思っちまったからな。 あながち谷口が言うことも否定できない。 「ちょっとキョン? あんた人の話聞いてるの?」 聞いてるともさ。 「さっきからぼけっとして……さっきからじゃないわ。今日の遅刻といい、やっぱりたるんでる!」 まあそう言うなよ。俺もこう見えて色々気をつかってるんだからな。 「なによそれ。気を使うならこの団長様に使いなさい。他の奴に使う必要なんてないわ」 まさにその団長様に気を使ってるとは言えないしなあ。 全くこいつってやつは……まあ今回はもう一人のハルヒに免じて許してやるさ。 「ところでさ……キョン」 食事を終えて落ち着いたところでハルヒが妙に深刻な表情になった。 「あんた、みくるちゃんのこと……好きなの?」 唐突に何を言いだすんだ、お前は。 「それとも有希? 前のラブレターも実はキョンが渡したものだったとか?」 「あのなあ、それは本人にも確認してるじゃねえか。大体それがお前に関係あるのか?」 ハルヒは気まずそうな苦笑いを浮かべる。 「べ、別に関係はないわよ。まああの二人があんたの相手をするわけないだろうけど、 SOS団の秩序を乱すようなことされても困るし? 大体あんたがそういう誤解をされるような態度だから 団長として注意を促しておかなきゃいけないんでしょうが」 まるで口を挟ませないといったようなハルヒの喋りっぷりを俺は静観していたが、 ハルヒのその必死さになんだか和んでしまったのは秘密である。 「ふっ」 「あっー! あんた人が真面目な話してるときに何笑ってんのよ!」 「別に」 ハルヒは顔を真っ赤にしている。 いや、違うな。頬を赤く……ってまさかな。 腕を組んでそっぽを向いたハルヒは 「ふんっ、とにかくもっとあんたは団長を崇拝しなさい。 ぼやぼやしてると新しく入ってくる新入生よりも低い地位になるわよ!」 と言い切り席を立った。 ハルヒがさっさと店の外に出て行ったので当たり前のように俺が伝票を会計にもっていく。 店に入る前に貯金を下ろしておいてよかったぜ。 店の外に出ると外は真っ暗だった。商店街のネオンの光だけが輝いている。 ハルヒのところにいくと、黙って手を俺のほうに突き出してきた。 手には袋がぶら下がっている。 なんだこれは。 「受け取りなさい」 「え?」 「奢らせたし今日は付き合わせたからほんのお礼よお礼。 いい? 団長のこの私が特別に労をねぎらおうって言ってるんだからありがたく思いなさい」 ハルヒはその袋を投げるように俺に渡すとさっさと走り去ってしまった。 小さな袋の中には小さなケースが入っていた。そのケースを開けると中から出てきたのは腕時計だった。 俺の腕時計は一週間ほど前にハルヒに引っ張りまわされたとき、壁にぶつけて壊れてしまったのだ。 俺はそのときハルヒに抗議したが、あいつは 「そんな簡単に壊れるような時計を持ち歩いてるあんたが悪いのよ!」 といつものように理不尽なことを言いだした。 そのとき若干ハルヒの言動にいらだちを感じた俺は、相手にせず黙ってその場を後にしたのだが……。 「あいつ……」 その時計は俺が持っていた安物の時計よりも高そうな時計だった。 全く、これを渡すためにわざわざ一日中連れまわして飯まで奢らせたのか。 素直じゃないというかなんというか、ハルヒらしいっちゃハルヒらしいんだが。 今日のハルヒは随分と大人しいほうだったし、あのもう一人のハルヒが来てから変化が見られるということは やはり本物のハルヒと何かしらの関係があることは間違いないのだろう。 俺が家までの道のりを自転車に乗らず、押して帰っていると、後ろから来た車が横で止まり、 窓から古泉が顔を出した。 「やあ。今、お帰りですか?」 なにしにきたんだ。 「涼宮さんについてちょっとお話したいことがあります。お時間よろしいですか?」 「それで、何かわかったのか?」 公園のベンチに腰掛けた俺の正面に古泉は立った。 「あくまでも仮説として聞いてください。我々の組織の考えです」 古泉は俺の表情を確認するかのように少し間を空けて続けた。 「例の涼宮さんのクローン、ここではあえてクローンと呼ばせていただきます。 あれはほぼ間違いなく涼宮さんが作り出したと考えて間違いないと思います。 最近の彼女が非常に安定しているという話はあなたにもしましたよね?」 俺は黙って頷く。 「元々彼女は普遍的なものを嫌う方です。常に不思議なことを求めています。 だから僕や朝比奈みくる、長門有希の三人が同じ場所に集まった、これはもう理解していると思います。 そして、彼女には葛藤もあった。不思議なことは必ずあるという涼宮さんと、 そんなものはないと思っている涼宮さんが彼女の中にはいるんです。 以前までは前者、不思議なことをとにかく追い求める涼宮さんが前面に出ていました。 ですから閉鎖空間が不安定な状態にあった。そして今は非常に安定している。 これがどういうことか、あなたにはわかりませんか?」 わからんな。 古泉はふっと笑みを浮かべて続ける。 「常識人としての涼宮さんが前面に出てきているということです。 不思議なことは起こらなくてもいい。SOS団という枠の中で楽しいことができればいいと、 彼女は感じ始めているんですよ。もちろん、無意識の上での話です。 実際には彼女はそんなことを口に出したりしませんし、表面上は以前の涼宮さん自身の考え方と 何も変わっていないはずです。以前の涼宮さんはあなたに選択肢を与えました。 少なくとも僕はそう考えています。 元の世界に戻るのか、それとも新しい世界を作り出すのか、それをあなたに託したのは あなたもよく知っているSOS団団長としての涼宮さんでした。 しかし、今回はちょっと違います。 彼女は今の生活に不満があるわけではない。むしろ満足していると言ってもいいでしょう。 それはひとえにあなたのおかげでもあるわけですが。 さてその涼宮さんが再びあなたに選択肢を与えるとしたら、どのような選択肢だと思いますか?」 俺は口を開くことはなかった。 「もうお分かりかと思いますが、涼宮さんはあなたに選んでもらいたいんですよ。 常識人としての涼宮ハルヒなのか、それとも、今までの涼宮ハルヒなのか。 その結果として出てきたのがあのクローンというわけです。 昨日の様子だと、涼宮さんに近いところを持ちながらもその性格は丸で異なるようですし、 あながちこの仮定も否定しがたいと思いますが、どうでしょうか」 古泉は小さく肩を竦ませてみせた。 「お前の言っていることが本当だとして、俺にどうしろっていうんだ」 「簡単なことです。あなたがどちらかの涼宮さんを選ぶ……ですよ」 簡単なこと? よく言うぜ。 「恐らく、世界改変にはいたらないと思いますよ。どちらを選んだとしてもね。 ただ、涼宮さんはあなたの選択に従い、選ばれなかった涼宮さんの人格は消え去ることになるでしょう」 二人の間に沈黙が流れる。 古泉は前髪をかきあげると俺の横に座った。 「あくまでも我々の仮定です。長門さんや朝比奈さんは別の答えを出すかもしれません。 でも、信憑性もありそうな話だと思いませんか?」 「お前らはどうしたいんだ?」 「我々はあなたの決断を見守るだけです。先程も言ったようにそこまで深く考えることではないんですよ。 どちらの人格を選んだところで涼宮さんの力が失われるわけではないでしょうし、 我々としてみれば大人しい涼宮さんのほうが扱いやすいかもしれませんが」 結局お前らにとってハルヒは観察の対象でしかないんだろうからな。 「それだけではありませんよ。少なくとも僕個人は涼宮さんのこともあなたのことも大切に思ってます」 その言葉、どこまで信用すればいいんだか。 しかし、なんでまた俺なんだ。 「あなたも強情ですね。いや、失礼、あなたと涼宮さんの信頼関係に口出しするのは野暮だ」 二人のハルヒを比べて俺に選べってか。 どんな罰ゲームだそれは。なんで選択肢がハルヒしかないんだ? そこで朝比奈さんが出てきてくれれば俺は間違いなくそっちを選ぶぞ。 「もちろんそれもありでしょう。だけど、その場合はどうなるか、あなたが一番良くご存知だと思いますよ?」 閉鎖空間か。 「今回はそれだけじゃ収まらないでしょうね。少なくとも、あなたに再び選択肢が与えられることもないでしょう。 今回ことにしても涼宮さんにしてみればかなりの譲歩でしょうからね」 むう。 俺は黙りこくった。その間も古泉はハルヒがどうとか言っていたが、半分も頭に入ってこなかった。 これは俺の葛藤でもあるわけだ。 古泉の話を馬鹿馬鹿しいと思う反面でハルヒのことを意識しているのもまあ間違いないだろう。 認めたくはないけどな。 しかし古泉よ。今日会ったハルヒはいつもと違ったぞ? 少なくとも今までああいうハルヒは見たことはない。 「恐らく涼宮さんなりに対抗しているってところじゃないでしょうか? もちろん無意識的にですが。 あなた好みの女性に近づこうとするためにね」 なんだそれは、気持ち悪い。 ここでまた古泉は決めポーズのように肩を竦める。 「女心ってやつですよ」 結局古泉からは聞きたくないようなことも聞かされて帰宅したときには午後九時を回っていた。 夕飯を何も用意してこなかったので、恐らくあのハルヒは腹を空かしているに違いない。 今日の風呂はどうしようかとか考えながら部屋に入ると、暗闇の中赤い光がポツンとベッドの上で瞬いていた。 電気をつけてドアを閉めると、その光は膨張してハルヒへと変化した。 「おかえり、キョン」 「遅くなってすまなかったな。夕飯食うだろ?」 「うん。何度か妹さんが部屋に入ってきたからどきどきだったよ」 ハルヒは微笑んで応える。俺は不覚にもドキッとしてしまった。 昨日の言葉もそうだったが、こっちのハルヒの言葉にはどうも弱い。 ある意味ハルヒの顔に朝比奈さんとまではいかないがしおらしさのある性格が合わさったのだから、 より俺の理想に近づいたと言えるのである。 夕飯を用意するとか言ったが、下で食べさせるわけにもいかないし風呂の問題もある。 「ハルヒ、外で飯食うか? ついでに銭湯寄ってくればいいだろうし」 「でも、大丈夫なの? だいぶ時間も遅いけど……」 こうやって遠慮がちに言われると、何とかしてやろうという気になってしまう。 こっちのハルヒはどうやらわびさびというものをわかっているらしい。 なるべく親にばれないようにと外に出ると、俺たちは近くのファミレスへと向かった。 俺はすでに腹一杯だったので、ハルヒに食べたいものを食べさせてから銭湯に向かうことにした。 今日はすでにハルヒに夕飯を二回奢ったことになるのだが、こちらのハルヒはご丁寧にも 何度も頭を下げて礼を言ってきた。 まるで対照的である。こうなってくると、古泉の言ってることも信憑性が出てくる。 待て待て。もしかしたら長門の知り合いの宇宙人の陰謀かもしれないし、 朝比奈さんのお仲間の未来人の仕業かもしれない。 ここで古泉の言うことを信じてしまうのは早計というものである。 もし違ったら目も当てられない事態になることは容易に想像がつく。 何事も慎重に、だ。とはいえ、こんな生活をいつまでも続けるわけにもいかないのであって、 長門あたりに早急に事態の収拾をしてもらいたいものだ。 ファミレスを出てしばらく歩いていると、ハルヒが俺の手を掴んできた。 微妙に頬を赤らめながら。 さすがにこれを振り払うことは出来ず、流されるままにハルヒの手を握り返してしまった。 朝から晩までハルヒ漬けの生活。これを羨ましいと思う奴はすぐにでも名乗り出てくれ。いつでも変わってやるぞ。 結局二人目のハルヒが現れた原因もはっきりわからないまま、終業式の日を迎えてしまった。 長門や朝比奈さんからアプローチがないことを考えると、古泉の線が強くなってしまうわけだが……。 とりあえず今日学校で長門に聞いてみようと思っている。 ハルヒのクローンは今日に限って学校に行きたいと言いだした。理由を尋ねると、 「今日はあたしも行かなきゃいけない気がするの」 という返答だった。 学校内で見られてしまうリスクももちろんあるが、それがこの現象の突破口のきっかけになるかもしれないし、 俺は絶対に学校ではハルヒの姿にならないということを固く約束させて連れていくことにした。 このハルヒ曰く、なぜかSOS団の団員の居場所がわかるのだということなので、 姿を変えても問題ないということだったが、万が一のこともあるし他の生徒がハルヒを二人見たら それはそれで大問題なので念を押した。 今日は終業式だけなので授業もなく、午後には自由の身になる。 SOS団の活動はもちろん行われるだろうが、長門や朝比奈さんと話す機会もできるだろうし、 丁度いいだろうと考えていた。 教室に入ると、珍しくハルヒはまだ来ていなかった。 チャイムが鳴る直前になってようやくやってきたのだが、どうもいつもの覇気が感じられない。 「八時間は寝たはずなのに体がだるいのよ、何でかしら?」 と愚痴り始めたと思ったら机に突っ伏してしまった。 俺と何かあるとその次の日のハルヒは大体こんな感じなのでいつものことかと放っておいた。 体育館で終業式が始まり、十分ほど経った頃だったろうか、校長の話が続く中 「ドスン」 といった重い物が倒れるような音が体育館の中に響き渡った。 誰かが貧血で倒れたのだろう。音のした方からざわざわと生徒の声が聞こえてくる。 そんなに遠くないな。同じ学年か? と思い、そちらの方を見るとなんと倒れていたのはハルヒだった。 近くの男子生徒に支えられ、教師が数人近寄っていく。酷い顔色をしている。 校長の話が一時中断され体育館内がざわついたが、すぐに一人の教師が静かにするようにと大声を出すと 再び体育館内は静寂に包まれた。 ハルヒは教師に抱きかかえられるように体育館を出て行った。保健室の先生もそれに同行して出て行く。 健康優良児を絵に描いたようなあのハルヒが貧血で倒れるほどデリケートとは思えない。少なからず、 嫌な予感を抱いたのは俺だけじゃなかったはずだ。 一抹の不安を抱えながら終業式を終えて、教室に帰ろうとしたところで古泉が隣にやってきた。 「先程のは涼宮さんで間違いありませんよね?」 間違いないだろう。ハルヒほど目立つ奴もそうそういないからな。 さすがに古泉もこの事態には笑顔を繕う余裕もないようで、ハルヒの心配をしているようだった。 ま、どういう形で心配しているのかはこの際触れないでおこう。 「あちらの涼宮さんは今どこに?」 「今日はついてきてる。教室の俺の鞄の中さ」 ふむ、といった感じで古泉は考えるような仕草をした。 「少し気になりますね。関連がないとは言いきれませんから」 考えすぎじゃないのか? ハルヒだって一応は人間だ。体調が悪くなることもあれば貧血を起こすこともあるだろうよ。 「そうであればいいんですけどね。いずれにせよ、あなたにお任せすることにしましょう。 それではまた後ほど」 そう言って古泉は去っていった。 教室の近くまで戻ってきて、俺は長門の後姿を見つけた。 「長門」 長門はゆっくりとこちらを振り向く。 「聞きたいことがあるんだ」 「……というのが古泉の説なんだが、お前のほうでは何かわかったのか?」 先日古泉から聞いたハルヒが俺に選択肢を与えたという話を簡潔に長門に伝えると、 長門は少しの間をおいてゆっくりと口を開いた。 「情報統合思念体は困惑している」 どういうことだ? 「存在しているすべての物には情報がある。だけどあの涼宮ハルヒには情報がない」 結論を言えばわからない、ってことか。 長門は小さく頷く。 「古泉一樹の説が有力であると私も思う。実在している涼宮ハルヒにも変化が見られる」 ハルヒに変化が起きていることは俺もなんとなくだが気づいている。 それは古泉にも言ったことだが。 「今、涼宮ハルヒを構成している情報の弱体化を確認した」 「なんだって?」 「彼女が倒れたのもその影響」 原因はわからないのか? もう一人のハルヒとの関係は? と聞きかけたところで担任の岡部がやってきてしまった。 長門にまた後で聞かせてくれと言い残し、俺は教室へと戻った。 ハルヒは保健室で寝ているだろう。下手したら家族が迎えにきているかもしれない。 そう思っていたのだが、席にはハルヒが座っている。 「お前、大丈夫なのか?」 と俺の問いに、ハルヒは微妙にはにかむような仕草をした。 まさか! 俺は岡部が教室に入ってくる前にハルヒの手を掴み廊下に飛び出し、人気のないところまで走った。 これではいつもと逆である。 「学校ではその姿にならないって約束しただろ?」 「あたしもそのつもりだったんだけど、どうしてかわからないけどあの姿に戻れなくなったの」 このハルヒが言うには、俺の鞄の中に入っていたが突然その状態を維持できなくなり、 鞄を出てハルヒの姿になってからは光の玉の姿には戻れなくなってしまったというのだ。 ハルヒが戻ってこないのはわかっていたから、とりあえず俺が戻ってくるまで席についていることにしたと。 ハルヒが倒れたことと関係があるのだろうか。とにかく校内に二人のハルヒがいるのは大変まずい。 「ねえ、キョン。あっちの涼宮ハルヒは、どうしたの?」 「貧血で倒れたんだ」 「そう……」 ハルヒは悲しげに表情を曇らせた。 まるで、なぜそうなったかを知っているかのように。 とりあえずハルヒは部室に押し込むことにした。本人はSOS団の団員が来たら嫌だと言っていたが、 他に方法はないし来たら掃除用具入れのロッカーにでも隠れればいいと納得させたのだ。 そして教室に戻った俺が岡部にこっぴどく怒られたのは言うまでもない。 クラスの連中はハルヒの姿を見ていたはずだが、ハルヒの性格も大体知っているのだろう、 あまり体調が良くないのに教室に戻ってきたが、俺がそれを保健室に連れていった、という絵に見えたようで 誰も気にしていないようであった。そう見られるのも不本意ではあるが、今はそんなことも言ってられないからな。 通知表の受け渡しという魔の行事を終えてその日のHRは終了となった。 谷口や国木田と軽く会話を交わした俺は、部室に行く前に保健室へと向かった。 ハルヒがまだいるかもしれないからな。一応様子だけは見ておいたほうがいいだろう。 保健室に到着すると、中から保健の先生が出てきた。 「あら、何か御用?」 「いえ、涼宮はまだ中に?」 「ええ、大分顔色も良くなったけどもう少し休ませてから帰すわ。あなたは……?」 クラスメイトです。と伝えたところ何を勘違いしたのか、 「あらあら、じゃあ悪いけどあなた送ってあげて頂戴。家のほうに連絡したんだけど、誰もいないのよ」 もう少し休ませてから、と言って保健の先生は職員室の方へと行ってしまった。 やれやれ。 「あ! キョン君じゃないかいっ?」 この声は、 「鶴屋さん、朝比奈さんも」 朝比奈さんは鶴屋さんの後にくっつくようにしてついてきていた。 「キョン君もお見舞いに来たのかいっ?」 ええ、まあそんなところです。 「涼宮さん、大丈夫かなあ……」 いつも酷いことをされているのに朝比奈さんはまるで天使のような優しい心をお持ちだ。 その心を少しでもハルヒにわけてやりたいですよ。 「私、様子見てきますね」 そう言って朝比奈さんは保健室の中に入っていった。鶴屋さんもついていくのかと思ったが、 ドアを閉めると俺の顔を覗き込んできた。 「ほうほう。あんまり動揺はしてないみたいだねっ」 どうして俺が動揺せにゃならんのですか。 「キョン君! はっきりしない気持ちは時に人を傷つけることもあるんだよっ。 キョン君が悪いわけじゃないけどねっ」 鶴屋さんはまるで俺の心を見透かしたかのように言う。 「ふっふーん。なんでわかるんですかって顔してるねぇ。 ま、違ったら違ったでいいんだけどねっ」 そう言って鶴屋さんは保健室に入っていった。 二人が出てくるまで俺は廊下で待つことにした。鶴屋さんから言われた言葉が少しひっかかっていたのもあったからだ。 十分ぐらいして二人は出てきた。 「今日は活動しないと思いますけど、部室に行ってますね。キョン君ともお話したいことがありますから」 朝比奈さんはそう言って鶴屋さんと去っていった。 あっちのハルヒは大丈夫だろうか。 「キョン君、またねっ!」 SOS団の中ではあまり俺にはっきり意見する人がいない。ハルヒは別枠として、 古泉もあまりストレートには言わないし、朝比奈さんや長門もだ。 そういう意味でも鶴屋さんの一言は大きかった。 なんとなく入りづらかったが、いつまでもここに突っ立っているわけにもいかないので、 俺は意を決して中に入った。 保健室の中にはベッドが二つあり、どうやらハルヒは奥のほうにいるらしい。 カーテンで遮られているので入り口からでは様子を伺うことはできない。 カーテンの側まで近づいたところで、中から声が聞こえた。 「キョン?」 良くわかったな。 「みくるちゃんが言ってたからよ。あんたがいるってね」 なるほどな。納得だ。 「わざわざ何しにきたわけ?」 カーテンを開けると、ハルヒはベッドの中に潜り込んで頭だけを布団の中から出していた。 しかし、頭は逆側に向けているので表情を伺うことができないわけだが。 「大丈夫なのか?」 「何が? ちょっと寝不足なだけよ。みくるちゃんもわざわざ鶴屋さんと来たりして、大げさなんだから」 お前は昨日八時間も寝たとか言ってたじゃないか。それに誰だって心配すると思うぞ。 倒れたなんて聞いたらな。 「とにかく、大したことなんてないのよ。これから山だって行くんだし、寝てる場合じゃないんだから」 ハルヒはそう言って起き上がろうとした。 「おい、無理するなよ」 「別に無理なんか……」 と言いかけてハルヒは手で胸の辺りを抑えた。 だから言ってるだろうが、体調悪いときはゆっくりしておけ。 どうせ治ったらあほみたいに遊びまわるんだから、今ぐらいゆっくりしてても誰も文句は言わんぞ。 むしろみんなも休める。 「うるさいわね……」 ハルヒはまた布団をかぶるとそっぽを向いてしまった。 俺は辺りを見渡して椅子を見つけるとベッドの横に持ってきた。 「なにしてんのよ」 「まあ、なんだ。俺も前に入院したときは見てもらったしな。たまにはこういうのも悪くないだろ」 ハルヒは黙り込んだ。 俺は、「あれは団長としてだから別にあんたのために行ったんじゃないわよ」とか言われるもんだと思っていたので この無言には不意をつかれた。 帰宅する生徒たちの声が聞こえてくる中、沈黙は流れ続けた。 ふとハルヒの手がベッドから出ていることに気づいた。 クローンハルヒの行動の影響か、それとも鶴屋さんの言葉の影響か、 はたまた俺が血迷ったのか、気づいたら俺はその手を握っていたのである。 ハルヒが一瞬体をびくっと震わせた。しかし、声は出さない。 そのうち、ハルヒも俺の手を握りこんできた。 別に俺もハルヒも深い意味があったわけではないだろう。体が弱っているときは手を握ると元気が出るとか そんな噂を聞いたからである。 ……いかんな。鶴屋さんの言っていたことを俺はすでに忘れかけていた。 だが今はそういうことにしておいてくれ。とてもじゃないが心の整理がつかないんでな。 二十分ほどそうしていたが、俺はもう一人のハルヒのことを忘れていたことに気づいた。 この本物のハルヒを連れて帰るにしても、あちらもどうにかしないといけないのだ。 どうやらハルヒは眠ったようなので、静かに手を離すと俺は保健室を後にした。 部室のある旧館に向かう途中の通用路でクローンハルヒが立っているのを見つけた。 「キョン。部室にみくるちゃんが来たから出てきちゃった」 ハルヒのクローンは、本物と変わらない笑顔で俺に近づいてきた。 「そうか。悪いんだけどな、これから朝比奈さんと少し話しをしなきゃいけないんだ。 どこか人目につかないところで待っててもらえないか?」 ハルヒはそれを聞いてむくれッ面になる。 「キョン全然あたしの相手をしてくれないのね」 状況が状況なんだから仕方ないだろ。家に帰ったら遊んでやるさ。そんな余裕があればな。 「まあいいわ。旧館の屋上で待ってるから、話が終わったら来てね」 満面の笑みを浮かべて走り去るクローンの後姿を見送ってから部室へと向かった。 部室の前までやってきた俺は念のためにドアをノックした。 さっきから大分時間は経っているが朝比奈さんのことだ、いつお着替えをしているかわからんからな。 「はーい」 部屋の中から愛らしい声が聞こえてくる。 中からドアが開けられるとそこには朝比奈さん、正確には制服を着た幼い方ではなく、 成長してよりナイスな体になった未来の朝比奈さんが現れた。 「あ、朝比奈さん」 「キョン君、お久しぶり。とりあえず中に入って?」 俺は促されるままに部屋の中へと入った。 部室の中には幼い方の朝比奈さんが椅子に座って気持ちよさそうに眠っている。 「本当だったら、この時代の私がいないときに来たかったんだけど、時間を選んでる余裕がなかったの」 朝比奈さん(大)は深刻そうな表情で目線を少し下に落として言った。 「キョン君も古泉君から聞いたと思うけど、涼宮さんのクローンはどうやら涼宮さん自身が作り出したみたい。 私たちの時代でもあそこまで完璧なクローンは……ってこれは禁則事項でした……」 頭をコツンと叩いてから朝比奈さんは続ける。 「私たちも古泉君たちと同じような見解で今回のことは見ているわ。問題は、本物の涼宮さん。 体調を崩したのは、恐らく少しずつクローンと入れ替わろうとしているから、その弊害だと思う」 なるほど、それでクローンハルヒも以前使えたような力が使えなくなったということか。 少しずつ本物の人間に近づきつつあって、それは本物のハルヒの力を吸い取るように成長している。 そういうことですよね。 「そんな感じだと思う。断定はできないけど……辻褄は合うでしょ?」 確かに、ハルヒが体調を崩したのと同時期にクローンが特別な力を失っている。 これはいよいよ認めなければいけないらしい。 「このままいけば恐らく本物の涼宮さんの存在は消えて、今までクローンだった涼宮さんが本物になるはず。 あくまでも自然に、誰にも気づかれないで元々そういう人間だったという認識になるの」 それは、俺もですか? 「それはわからないけど……」 朝比奈さんは言いにくそうに目をそらした。 「仮に、いや、俺に選択肢が与えられたという前提で考えた場合ですが、 俺はまだどちらを選んだりとかしてませんよ。なのに本物のハルヒと取って変わろうとしているのはなぜです?」 少し怒ったような顔で朝比奈さんが詰め寄ってくる。 「それはキョン君がはっきり伝えないからです。涼宮さんが無意識的にしろキョン君に選択を求めたのは 今の自分よりもこっちのほうがいいかもしれないって思ったからです。 答えを出さないってことは、涼宮さんとしてはやっぱり今の自分じゃ駄目なんだと思うに決まってるじゃないですか!」 この時の朝比奈さんは本気で怒っていたのかもしれない。 もともとおっとりしている人だ、怒っても怖いということはないが、 涙目になって迫ってくる姿には俺の良心を揺さぶるものがあった。 「どちらにしても、キョン君がちゃんと答えを出してあげてください。 どちらの涼宮さんを選んでも未来にはさほど影響はありません。 だから、よく考えて決めてあげてください」 古泉と同じようなことを最後に言って、朝比奈さんは部屋を出て行こうとした。 「朝比奈さん」 「はい?」 「朝比奈さんは、どちらのハルヒが良かったんですか?」 朝比奈さんは困ったような顔をしてから、 「禁則事項です」 と微笑み、去っていった。 可愛らしい寝息を立てている朝比奈さんの横に座り、俺は善後策を考えることにした。 答えを出せ、と言われてすぐに答えを出せるほど俺はハルヒのことを意識しちゃいなかった。 普段があんなだし? いきなりそういうふうに見ろって言われても無理があるってもんだ。 しかし、時間的余裕はあまりないようだ。 ハルヒのあの様子だと、時間が経てば経つほど力を失っていくようだ。 どうしてこう毎度毎度俺は世界の危機だとか人命がかかってるとか、 そんなことばかりに巻き込まれるんだ? それはハルヒと出会ってしまったから、運命……だとは思いたくないが。 以前、閉鎖空間に行ったときもこんなことを考えたな。 ハルヒは俺にとって何なのか。 それはあの時とは少し変化したのかもしれない。 ただ、明確な答えが出せるほどハルヒに対しての気持ちを煮詰めたわけではない。 俺にとってのハルヒ……。 それにしても鶴屋さん、朝比奈さん(大)、古泉やらにあそこまで言われたらまるで俺が悪者だ。 この決着がついたら、ハルヒに奢らせてやろう。理由は適当に考えればいいさ。 まだまだ俺たちの関係は続いていくんだからな。 朝比奈さんが目を覚ましたので事情をある程度まで説明した俺はもう一人のハルヒが待つ屋上へと向かった。 朝比奈さん(小)はただ一言だけ、 「キョン君、今まで私たちがしてきたことを思い出して」 と言って俺を見送ってくれた。 屋上の扉を開けると、クローンハルヒは屋上の調度真ん中あたりで体育座りをしていた。 「よう、待たせたな」 「キョン、待ってたんだから」 ハルヒは立ち上がると俺に向かって走ってくる。 直前で止まるのかと思っていたが、次の瞬間にはタックル(本人は抱擁のつもりだったらしい)をくらって 天を仰いでいた。 ハルヒの頭が俺の胸のあたりにあり、その手でYシャツが握り締められているのがわかる。 「おい、どいてくれないか」 その言葉にハルヒはゆっくりと首を横に振る。 「いや……」 嫌って言われてもな、この誤解されかねない状況は非常にまずいんだが。 「キョンは……あたしのこと嫌いなの?」 ハルヒらしくない声でそういうこと言われると調子が狂うんだが。 「ハルヒ、それなんだけどな……」 と言いかけたところでハルヒは勢いよく体を起こした。 「キョン、遊びにいこう! まだ時間も早いし、ちょっと遠くなら誰にも会わないし。 ね?」 まるで最後まで聞きたくないといったように話を遮ったこのハルヒは立ち上がると俺の腕を掴んで引っ張り上げた。 「話を最後まで聞いてくれ、大事なことなんだ」 「……遊びに行ってくれたら、聞くから、だから……行こ?」 むう。そんな目で見ないでくれ。まるで朝比奈さんのような愛らしい小動物のような目線で見られたら 俺もハルヒとはいえ強引に話を進めるわけにはいかないじゃないか。 「わかったがな、まだ本物のハルヒが校内にいるんだ。それを家まで送らなきゃならん」 「それなら大丈夫。古泉君がどうにかしてくれるわ」 なぜ古泉の名前が出てきたのかは知らんが、とりあえず確認をとってみることにした。 電話に出た古泉は、まるで電話が来るのを待っていたかのような口ぶりで、 「涼宮さんでしたら僕が責任をもって送り届けますよ」 と言った。 どこまで知っているんだ? まさかここにいるハルヒと繋がってるんじゃないだろうな。 「クローンの涼宮さんがまだ校内にいることはこちらも把握してますから。 今回はあなたのサポートを徹底的にやってやろうと決めたんですよ」 ありがたいのやらそうでないのやら。 「そうそう、あなたの選択に口を挟むつもりではありませんが、これまでのSOS団、 涼宮さんのことを含めて楽しい思いをさせていただきましたよ」 なんだそのもう終わりみたいな言い方は。 「いえ、そういうつもりではありませんよ。ただ、環境が変わる可能性もあるのでほんのお礼みたいなものです」 古泉はそう言うと電話を切った。 「大丈夫だったでしょ?」 満面の笑みでハルヒが顔を覗き込んでくる。 そのハルヒのクローンを見ていてわかったことがある。 本物のハルヒが弱っている反面、こちらのハルヒの感情が豊かになってきたように見える。 元々どっちが本物かわからないぐらい似てはいたが、ここに来て雰囲気的な部分で変化が見えるような気がする。 校内にいるハルヒのことも気にはなったが、ここは古泉に任せておこう。 このハルヒに話を聞いてもらわなければ解決のしようもないからな。 「で、どこに行きたいんだ? 言っておくが、そんなに金はもってないぞ」 「んー……キョンと一緒だったらどこでもいいんだけど、なるべく人の目を気にせず動けるところがいいじゃない?」 どうせハルヒは今外をまともに動けないだろうから、遠くに行く必要もないと思うが。 「それじゃ、キョンに任せる」 任せる、と言われても俺にもそんなレパートリーがあるわけじゃないぞ。 「そうだ、商店街! この前涼宮ハルヒとも行ったところ、そこ行きたい!」 というわけで、見た目は全く同じのハルヒと再び商店街にやってきた。 どこが違うかというと、このハルヒは電車に乗ってからずっとべったりくっついてくるぐらいか。 同じコースで周りたいというので、まずは電気屋のおっちゃんのところに向かった。 「おっちゃん! 久しぶり!」 そのおっちゃんにしてみれば二日ぶりぐらいだろう。 まあハルヒの性格だから、本物が言ったところで違和感はなさそうだが。 「おや、今日も来たのかい? ……随分と仲良しだね、いいなあ若い子たちは。あっはっは」 ハルヒに無理矢理繋がされた手を見て人のよさそうに笑ったおっちゃんは そうだ、と何かを思い出したように店の奥に消えていった。 三十秒ほどして戻ってきたおっちゃんの手にはカタログのようなものが握られていた。 「これ、今度来たときに渡そうと思ってたんだよ」 そのカタログは……チャッカマンのカタログだった。 話を聞くと、律儀にもこの電気店の店主のおっちゃんはハルヒの役に立てなかったことを悔やんでいたようで 火炎放射器はさすがに手に入らないが、強力なチャッカマンなら、とカタログを取りに行ったんだそうだ。 そこまでハルヒに肩入れする理由は知らんが、今ここにいるハルヒには何のことだか理解できないようで、 終始不思議そうな顔をしてカタログに目を通していた。 検討してみます、という言葉を残して電気店を出て商店街を歩いていると、 最近できた店だろうか、見たことのない洒落た感じの時計屋ができていた。 この前もここは通ったはずだが、あの時はハルヒに引っ張られるように進んでいたので、 気がつかなかったのかもしれないな。 このハルヒも興味を示したのか、店の中へと俺を引っ張り込んでいった。 しばらくの間、ハルヒは可愛らしい時計などを見て女の子らしい声を挙げていたが、 俺はふと目に留まった時計があった。 そう、それは俺が今している時計と同じものだったのだ。 ハルヒはここでこの時計を買ったのだろうか。 すると、若い女性の店員が近づいてきた。 「いらっしゃいませ。何かお探しですか?」 「いえ、ちょっと見てるだけなので」 「そうですか、あら? あなたはこの前いらしてた……」 とハルヒの方を向いて店員は言った。 「へ?」 ハルヒが何のことだかわからないといった表情をしたので、俺はあわててフォローに入った。 「実はこいつ双子の姉がいまして、たぶん買いにきたのはその姉のほうかと」 「あら、そうでしたか。随分お悩みになってたんですよ。どなたにあげるんですか? って聞いたら、 恥ずかしそうに『男の友達です』って言ってましたけど、あれはきっと恋する女の子の目でしたわ」 なぜか店員が恥ずかしそうに両手で頬を抑えている。 「最終的にこちらの時計を買っていかれました。もらった男の子と上手くいっていればいいんですけど……」 今度は涙目になってすすり泣きを始めた。変な人だ。 直後、俺はハルヒに腕を引っ張られて外に連れ出された。そして、腕を捲くられて時計を見ると、 「……あたしも買う!」 とか言い始めた。 お前は金を持ってないだろ。それに時計なんて買ってどうするんだ。 「キョンにあげるの! あたしもあげたいの!」 ハルヒのイメージがどんどん崩壊していくな。そんなセリフ、一生聞けないと思ってたぞ。 そんなことで対抗心を燃やしても仕方がないし、時計を二つも持っていても使い道がないということを 懇々と繰り返してようやく納得したハルヒはまた俺の手をとって歩き始めた。 日が落ちるまでそんな調子で連れ回され、暗くなったところで夕食をとることにした。 とはいえ今日は制服なので駅の近くのファミレスに入ることにした。 クローンのハルヒは、 「雰囲気あるところがよかったけど、仕方ないかあ」 と残念がっていたが、俺の懐具合からしてももう一度あのレストランはさすがに厳しいぞ。 小さい男と思われるだろうが、それならぜひうちの母親に小遣い値上げの説得をしてくれ。 食事中はハルヒは終始笑顔だった。 しかし、出てくる言葉は、今度はどこに行きたいとか、キョンにプレゼントを挙げたいから何が欲しい?とか そういう言葉だった。 さすがにそんな中で話を切り出すわけにもいかず、食事を終えて外に出たところでハルヒに話をしようと 改めて言った。 するとハルヒはそっぽを向いて、 「それじゃ、北高にいきましょ」 と言ってさっさと歩き始めた。 電車内では来る時とうってかわってハルヒは無言だった。 離そうとしなかった手も、微妙な距離で離れたままだ。 北高の校門まで来たが、当然ながら門は閉じられている。 「中に入りましょ」 そう言ってハルヒは校門を乗り越えようとした。 俺も黙ってそれに従う。 二人は校庭の一角にあるベンチまできて腰をかけた。 そのまま十分ぐらいはどちらも口を開かなかった。春が近づいているとはいえ、夜風はまだ冷たい。 「なあ、ハルヒ」 「ん?」 「お前はまだどうしてここにいるか、知らないんだよな?」 沈黙が流れる。 「知ってるわ」 俺が続けようとした言葉を遮るようにハルヒは言った。 「ここにいる理由、初めはわからなかったけど、もう見つけたの」 見つけた? 「あたしはキョンと一緒にいたい。理由は、それだけで十分」 ハルヒは真っ直ぐ前を見据えたままだ。 「お前はな、ハルヒに……」 「聞きたくない。……わかってた。涼宮ハルヒがあたしを作り出したってこと」 ハルヒの目に涙が浮かんでいるように見えた。 「でも、涼宮ハルヒはあなたに選択を委ねたんでしょ? それなら、あたしが必ずしも消えるなんて限らないじゃない! あなたは、あたしみたいな涼宮ハルヒを求めていたんじゃないの? 素直で、普通の女の子のような涼宮ハルヒを!」 涙をこぼしながらハルヒは俺に訴えるように言った。 やはり、俺が招いたことだということは認めざるを得なかったが、こう正面から言われてしまうと、 何も言えなくなってしまう。 俺は、俺にとってのハルヒは……。 「ハルヒ、俺は確かに暴力的でわがままで素直じゃないハルヒよりも、 お前のような素直で女の子らしいほうがいいと思っていた」 「それじゃあ!」 「でも、違うんだ。俺にとって大事だと思うハルヒは、ありのままのハルヒだ。 確かに暴力的だし人の話も聞かないし女の子らしくないわで良いところはどこだと聞かれたら 正直どう答えたらいいかわからないが、それでも俺はありのままのハルヒを選ぶ」 クローンのハルヒは俯いてしまう。 「俺には初めから選択肢なんてなかったんだ。選択する権利もないし、必要もない。 初めからそういうハルヒに俺は惹かれていたんだからな」 「……そっか」 ハルヒは立ち上がって数歩前に進むと、ゆっくりとこちらを振り向いた。 「あたしだったら、もっとキョンのことわかってあげられる自信あるよ。 SOS団だってもっと楽しくなる! あの三人とだってきっと上手くやっていける!」 「ハルヒ……」 「だから……」 ハルヒは笑顔を作っていたが、その頬を涙が伝っているのは暗い中でもわかった。 「あたし……消えたくないよ……キョンと……もっと楽しいことしたり、一緒にいたいよ……」 次の瞬間、ハルヒの体が淡く光ったかと思うと、その体がまるで透けるように薄くなり始めた。 「……キョン、最後のお願い……あたしのこと、抱きしめて」 「しかし……」 「大丈夫、後はもう消えていくだけ……だから、お願い」 俺は立ち上がると、ハルヒの背中に手を回した。 すでに感覚も薄れ始めていて、人に触っているという感覚とは少し違っていた。 「……暖かい」 「すまなかったな」 「今更謝らないでよ。あたし、短い間だったけど、キョンと一緒に過ごしたこと、絶対に忘れないから」 ハルヒの体はどんどんとその色を失っていく。 「また……いつか会えるよね?」 「ああ、会えるさ」 「そのときは、あたしも……」 消えかけていくハルヒは最後にこう言った。 「キョン。ありがとう」 翌日、肉体的にも精神的にも疲れていた俺は学校が休みに入ったことをいいことに布団から出ずに寝ていた。 気がつくと12時近くになっていたので飯でも食おうかと一階に降りていくと、 聞きなれた声がリビングのほうから聞こえてきた。 「あー、何よこれ! 結構難しいわね」 「ハルにゃんがんばれー!」 なぜかハルヒが妹とテレビゲームをしている。 「おい」 「あ、キョン君!」 「あんた、やっと起きたの? 春休みだからって気抜きすぎよ! たるんでるわ!」 いつもどおりのハルヒである。 「お前、体調はもういいのか?」 「あたしを誰だと思ってるの? SOS団の団長は風邪なんかでへこたれたりしないのよ!」 そうかい。で、 「何しに来たんだ?」 「遊びにきまってんじゃない! 後で古泉君もみくるちゃんも有希も来るわよ!」 まるで俺の家を私物化である。 「ったく、勝手に決めるなよな」 俺は苦笑いをして着替えをするために部屋へと戻った。 着替えの最中にドアが蹴り破られんばかりに開かれたかと思うと、ハルヒが立っていた。 「あ……」 上半身裸の俺を見てなぜかハルヒは赤面している。自分の着替えを男子に見せるのは平気なのに、 男の裸を見るのは恥ずかしいのか、偏った趣味だな。 「何が趣味よ。それより、昨日あんたが保健室に来てその後のこと、ほとんど覚えてないのよね。 気づいたらあんたいなくて、古泉君が車で送ってくれるって言って家で寝てたら急に元気になってきたのよ」 ほー、いい薬でも飲んだのか。 「薬なんかに頼るほどひ弱じゃないわ。それに、変な夢見たりしてあんまり良い気分じゃなかったわね」 そりゃ、あれだけのことがあって気分が良いなんて言えるほうがおかしいってもんだ。 そんな俺も昨日のことはかなりこたえた。 はっきりさせたって意味では解決したのかもしれんが、二度とはごめんだ。だから、 「ハルヒ」 「ん、何よ」 「俺は、お前みたいな奴と出会ってここまで無茶苦茶なことやってきたりしたが、 後悔なんかしていないし、本気でお前のことが気に入らないと思ったことはない」 「なに? どういう意味よ」 「俺は今のままのお前が好きなんだ。だから余計なこと考える必要はないと思うぞ」 ハルヒは先程よりも顔を真っ赤にさせたかと思うと完全にそっぽを向いてしまった。 「ば、馬鹿じゃないの? 何よいきなり……」 「まあ、そこに少し素直さがあればもっといいかもしれんが」 「す、素直って……」 ハルヒはそれから頭を抱えたり地団駄を踏んだりと今にも暴れそうになっていたが、 「時計……」 ん? 時計がどうしたんだ。 「時計……あげたでしょ。それで十分でしょ! それとも、あたしとあんたの間でそういう言葉が必要?」 ハルヒなりに譲歩した言葉だったのだろうけど、俺にとってそれは最もわかりやすい言葉だったし、 ハルヒの気持ちも伝わってきたからよしとしよう。 お前が言うな、とはさすがに言えないからな。 「いーや。確かに、言葉なんかいらんな」 「ふん」 そう、言葉なんて初めから必要なかったんだ。 俺とハルヒの間にはな。 しかしなんだ、そういう自信が持てなかったというのはお互い様だったと思うし、 もう一人のハルヒがその自信を俺たちに与えてくれたのかもしれない。 全くもって俺に平穏な日々を与えてくれないハルヒであるが、 それを含めて俺はできる限りこの団長様を支えていくつもりだ。 それが、あの消えてしまったハルヒに対する俺なりのけじめだと思うからさ。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/19.html
ハルヒ「週末にスキヤキパーティーするわよ」 古泉「いいですね、僕は鍋を用意しますよ」 みくる「私はお野菜もってきますね」 キョン「野菜は多いですからね俺と分担しましょう、朝比奈さん」 長門「…肉、もって来る」 ハルヒ「じゃあ、私はたま…」 古泉「卵も僕が持ってきましょう」 ハルヒ「えっと、マロ…」 みくる「マロニーと蒟蒻は私が用意しますね」 ハルヒ「やっぱり白…」 長門「米…持ってくる」 キョン「やっぱ友達同士で持ち寄るってのはいいな」 一同「ハハハ」 ハルヒ「……」 ハルヒ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キョン「…………」 ハルヒ「キョン!あんた人の話聞いてるの!?もういいわ、古泉君よろしく」 古泉「マッガーレ」 ハルヒ「…………有希、頼める?」 長門「だまれ」 ハルヒ「うっ…み、みくるちゃん頼める?」 みくる「なんであなたのいうことを聞かなくちゃいけないんですかー?」 ハルヒ「わかったわよ。私が行くわよ…ぐすっ」 バタン 古泉「マッガーレ」 ハルヒ 「ねえキョン、昨日私が言ったテレビの心霊特集見た? ほんと子ども騙しにも程があるわ! あんなの誰が見たって……」 キョン 「え、あ……いや、悪いな……見ようと思ったんだけど、妹怖がるから見れなかったんだ」 ハルヒ 「え……あ、ああ……そう……仕方ないわよね……」 キョン 「悪いな」 ハルヒ 「ん……別に」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………………………………それでね」 キョン「あれ……? 古泉まだか……?」 ハルヒ「古泉君、なんか急にバイト入ったからこれないらしいわよ」 キョン「そうか、じゃあ暇だな…………そうだ、たまにはオセロしないか? お前とはやったことないよな?」 ハルヒ「……仕方ないわね、やってあげるわ、じゃあ負けたほうは罰ゲームね」 キョン「……キツイのは無しだぞ、いいな?」 ハルヒ「あら、キョンは負けるの怖いの? そりゃそうよね、キョンの頭で私に勝つなんて……」 キョン「フンッ、俺の秘技【四方返し】を見てもそんなこといってられるか? ……ちょっと待ってろ、用意するから……」 ハルヒ「ふーん、なかなか楽しませてくれそうね……!」 キョン「楽しむなんて生易しいもんじゃ……アレ……? ……あっ、オセロ昨日持って帰ったんだった」 ハルヒ「へ……?」 キョン「悪い、オセロねえや」 ハルヒ「…………」 キョン「……暇だな~」 ハルヒ「…………(ワナワナ)」 ハルヒ「あ~も~暇ね~……」 キョン「珍しく賛成だ」 ハルヒ「ん~……そうだ、キョン何か面白い話してよ」 キョン「……急に言われてもなあ……」 ハルヒ「別にいきなり面白いのじゃなくてもいいわよ、ちゃんと笑ってあげるから」 キョン「……」 キョン「……昔さ、俺んちの隣のおじいちゃんが死んじゃって……」 ハルヒ「アハハハッ!! それサイコー!!」 キョン「…………」 ハルヒ「アハ…………ハ」 キョン「…………」 ハルヒ「…………」 キョン「……ダメだ……」 ハルヒ「うっ……ひっく……ごめんなさい……ぐすっ……」 ハ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キ「ああ…分かった」 ハ(珍しく素直ね…) キ「長門、行くぞ」 ハ「!?」 長「………(無言で頷く」 出て行く二人 ハ「………」 ハ「キョン、ガスコンロのガス切れちゃったから買ってきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) ハ「キョン、スレ落ちそうだから保守してきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) 長「……チッ」 ハ(こっちも!?) ハルヒ「ねえキョン、スキヤキしたあとご飯いれる派?」 キョン「ああ、うちは餅とかうどんも入れるな」 ハルヒ「あ! お餅入れるとおいしいわよね! 分かる分かる!!」 キョン「ああ、そうだな」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「…………………………………………………それでね」 キョン「ん……でも、やっぱりハルヒって料理うまいな」 ハルヒ「えっ……! あ……と、当然よ、当然! 私はキョンと違って万能型だからなんでもできて当たり前なのよ!」 キョン「………そういうトゲのある言い方やめろよ、せっかく人が誉めてんのにさ……あ~あ……誉めて損した」 ハルヒ「え……? あ……あ、その……」 キョン「………じゃあそろそろ帰るわ、長門、手伝ったほうがいいか?」 長門「大丈夫」 キョン「そっか、悪いな、じゃあな」 ――パタン ハルヒ「あ……」 長門「……もっと素直になったほうがいい……」 ハルヒ「…………そう……よね……ハァ……」 ハルヒ「ねえキョン、なんでみんな部室に来ないのかしら?」 キョン「・・・・・IEの履歴は消しといたほうがいいぞ」 「それじゃあな、ショタコン」 ハルヒ「ねぇキョン!卵の黄身と白身どっちが好き?」 キョン「何だいきなり」 ハルヒ「いいから答えなさいよ!」 キョン「・・・キミが好きだ」 ハルヒ「ごめん聞こえなかったわ、もう一回言ってくれる?」 キョン「キミが好きだ」 ハルヒ「私も好きよ!キョン!」 キョン「そうか、あの口の中の水分を根こそぎハンティングする感が大好きなんだよ」 ハルヒ「いや・・・そうじゃなくて・・・」 キョン「ん?じゃあなんなんだよ。お、長門~今帰るのか~?丁度良い、茶でも奢るからちょっと付き合えよ」 長門「コクリ」 ハルヒ「・・・・・・・」 長門「・・・・私は白m」 ハルヒ「聞いて無いわよ!」 キョン「俺はSOS団を辞めるぞーハルヒー!!」 ハルヒ「そんな!?あんたのいないSOS団なんて意味ないわ思い直してキョン!」 キョン「じゃあ、お前も止めろよ。そうすれば一緒だろ」 ハルヒ「それもそうね。あんた頭いいわね。 それじゃあ、早速生徒会に知らせてくるわ」 キョン「やったな!これでこの部室は文芸部のものだ。 あの訳の分からない同好会以下の部ともおさらばだぜ!」 長門「…ブイ」 古泉「まったくあなたも人が悪いですね」 みくる「古泉君も止めなかったじゃないですか」 古泉「それもそうですね」 キョン・長門・古泉・みくる「アハハハハハハハハッ」 ハルヒ「待ってててね。キョン今帰るからね!」 鶴屋「今日は私のおごりさ、がっつり食べてくれにゃ」 ハルヒ「ほら、キョンこれ焼けてるわよ!はやく食べなさい!」 キョン「かってに俺のさらに乗せるな、汚らわしい」 「あ、朝比奈さん、それハルヒがひっくり返したやつです、食べない方がいいですよ」 「おい古泉、それは俺が愛情こめて焼いてるやつだ、勝手に食うな」 古泉「だから食べるんじゃないですか、ああ長門さん、それ、涼宮さんが触ったやつですよ」 長門「・・・ありがとう」 ハルヒ「らんららんららーん♪キョン食べてくれるかしら、私のおにぎり」 ハルヒ「あっれー?おかしいな?にけやの袋しかないや、ま、いっか」 学校で ハルヒ「キョン、おにぎり作ってきたから一緒に食べなさい!」 キョン「どうしたんだめずらし・・・・おちょくってんのかお前」 ハルヒ「え、な、なに?」 キョン「脇で握られたちぢれ毛入りおにぎりなんて食えねーだろ」 ハルヒ「え、いや、脇でなんて、それに、いま冬だしえ、いや」 ハルヒ「さあ、出来たわよキョン。たらふく食べなさい」 キョン「…何だこれは」 ハルヒ「何って見て分からないの?蕎麦よ、そ・ば。 今日は暑いからざる蕎麦よ。あまりの美味さに昇天するわよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 ハルヒ「??」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知って蕎麦を用意したのか。 昇天か、あやうく殺されるとこだったぜ」 ハルヒ「え、ちが」 キョン「黙れ殺人鬼!もう金輪際俺にちかづくんじゃねえ!あばよ!!」 ハルヒ「あっ、キョン待って!」 ズルズルズル 長門「刻み海苔がない。わさびの風味も足りないこれは蕎麦じゃない」 古泉「さあ、出来ましたよキョンタン。たらふく食べてください」 キョン「…何だこれは」 古泉「何って、見て分からないんですか?蕎麦です。 今日は暑いからざる蕎麦です。あまりの美味さに昇天しますよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 古泉「・・・」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知ってそばを用意したのか。」 古泉「はい。知ってます。」 キョン「?」 古泉「キョンタンが蕎麦アレルギーということで、そば粉を使わずに蕎麦を作りました。 苦労したんですよ。」 キョン「古泉・・・・・・俺の為に・・・・・・」 古泉「さぁ、たらふく食べてください!」 キョン「うう・・・・・・ありがとう古泉・・・・・・」 ズルズルズル 長門「白くて蕎麦にしては太い。むしろうどん」 ハルヒ 「もぅ!男同士でこすったり、さわったりして!!何が楽しいの!!ニンテンドーDSいっしょにやろうよ!」 キョン 「それ以上大声で叫ぶな。お前がいう言葉はすべて卑猥に聞こえる」 古泉 「それに、われわれはニンテンドーDSなんかしてませんよ。キョンたんをこすったりさわったりして遊んでいるんですよ」 ハルヒ「!! ちょっと・・・私の机とイスがないじゃない!」 ハルヒ「ねぇ朝倉さん、私の机がないんだけどどうにかしてよ。」 朝倉「うん、それ無理。」 ハルヒ「無理って・・・、あんた学級委員長でしょ!」 朝倉「死になさい。」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「シャミセン~~~、ほれほれ~」 シャミセン「にゃ~」 ハルヒ「こっちこっち~~」 シャミセン「にゃーにゃー」 ハルヒ「やっはりあげなーいっ!」 キョン「おい、あんまいじめんなよ」 シャミセン「シャー!!」 ハルヒ「キャー!」 キョン「おい、ぱ、パンツ見えてるぞ…///」 一応いじめもののつもりだ ハルヒ「みんな!今度の日曜日に探索に向かうわよ! もしかしたら宇宙人とか何か出るかもしれないわ!」 みくる「こいつはくせぇッー!電波のにおいがプンプンするぜッーー! こんな電波には出会ったことがねえほどなァーーーッ 七夕で電波になっただと?ちがうねッ!!こいつは産まれてついての電波だッ! キョンくん 早えとこ病院に渡しちまいな!」 ハルヒ「な、そこまでいう必要ないじゃない!有希ちゃんは来るでしょ」 長門「これは試練だ 電波に打ち勝てという試練を受け取った」 ハルヒ「ひ、酷い みんなして酷いこと言わなくてもいいじゃない」 キョン「おい!これじゃあまりにもハルヒが可哀想だろう! 確かにハルヒは電波だがここまでいう必要がないじゃないか!」 ハルヒ「キョン…、それじゃ来てく【キョン】「だが断る」 部室から出て行く部員達、残されたハルヒ ハルヒ「私が何をしたっていうのよ・・・」 古泉「なんていうか……その… 下品なんですが…フフ…… 勃起………しちゃいましてね…………」 みくる「おめーなにキョン君たぶらかしてんだよーああ?!」 ハルヒ「すいません、私は恋しちゃだめってことですか?・・・・」 みくる「恋するなとは言ってないだろうが!!だったらキョン君以外でしろ!!わかったな!!」 ハルヒ「・・・・・・・はい」 みくる「明日も虐めてこいよ!!か弱い女の子に男は弱いんだからな!!」バタバタバタ ハルヒ「はい・・・・」 ハルヒ「キョン・・・・・・・・」 ハルヒ「やめて!電源コードを鼻にささないで!!」 みくる「ふふふ、いくわよ?スイッチ…」 ハルヒ「やめてえええぇぇぇ」 みくる「オン!!」 かちっ みくる「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」 ハルヒ「ひ、ひゃあぁぁあああ」 キョン「ハルヒ・・・お前に言っておくことがある」 ハルヒ「なによ」 キョン「オレは阪中さんのことが好きだ」 ハルヒ「!?と、ととと突然なに言い出すのよ!」 キョン「オレは本気だ。2番目は朝倉だ。それはどうでもいいんだが、 どうしたら彼女と付き合えると思う?」 ハルヒ「あ、あんたなんかがあの子と釣り合うワケないでしょ! なんたって相手はお嬢様よお嬢様!顔だってかなりかわいいし!」 キョン「わかった。お前はアテにならなさそうだ。他をあたってみる」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!どこ行くのよ!」 キョン「ちなみにハルヒ、お前は12番目に好きだ」 ハルヒ「・・・・・・・・」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見た!?」 キョン「黙れよ切れ痔女( ´,_ゝ`)」 ハルヒ「き、ききききき切れ痔じゃないわよ!キョンのバカあぁぁぁぁっ!」 ハルヒ「うわあぁぁ~ん!」 キョン「じゃあ俺が痔を治してやるよ」 ハルヒ「へっ?何を言って…きゃあ!ちょ…やめ…」 キョン「へへへ…なかなか綺麗なケツしてるな」 ハルヒ「アナルだけは!アナルだけは!」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見たでしょ!? …見たんでしょ? 白状しろ~~~」 キョン「……いや…(お前に)興味無いし…帰るわ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記み、見た!?」 キョン「えぇ、机に置いてあるあれ朝比奈さんの日記じゃなかったのか!?」 ハルヒ「やっぱ見たのね。この覗き魔」 キョン「プッ、お前の日記だったのあれクククッ…アハハ」 ハルヒ「何よ?笑われる内容は書いてないわよ、団長日誌なんだから」 キョン「ハハハ、だって乙女チックな文字にクマやウサギの手書きイラストだぜ」 ハルヒ「なっ、何よっ!!私だって女の子なんだからねっ、バカキョン!!」 長門「…かかと落とし!」 みくる「ふみゅ~~、ぃたいです~~」 古泉「ははは、空中モトヤチョープ!」 ハルヒ「ちょっ、ちょっと何すんのよ!!!」 ………… キョン「ハルヒ、空気読めよ…って言うだけ無駄か」 みんな「あはははははははは!!」 ハルヒ「うぇ~ん、腫れてるよ…」 ハルヒ「キョン、私の気持ちに気付いてくれるかな?」 長門「…それはない」 みくる「何ねぼけたこと言ってるんですかぁ?」 古泉「今日は差し入れを持ってきました。フンモッフベーカリーのカレーパンですよ。」 みくる「わぁ、知ってます。あそこのカレーパンって並ばないと買えないほど人気なんですよね。」 古泉「あそこのパン屋の主人とは古い付き合いでしてね、特別にとっておいてもらったんですよ。 さぁキョン君、どうぞ。」 キョン「あぁ、悪いな。」 古泉「朝比奈さんもどうぞ。」 みくる「はい、ありがとうございます。」 ハルヒ「気が利くじゃない古泉君!」 古泉「長門さんも。」 長門「・・・・・・」コクッ キョン「あれ?古泉、お前の分は?」 古泉「ちゃんと人数分買ってきたんですけどね・・・あ、気にしないでください。」 キョン「たぶんこの中にあつかましい奴が一人いるんだろうな。」 みくる「・・・・・・チラ」 長門「・・・・・・チラ」 ハルヒ「・・・・・・・あの、古泉君、私お腹いっぱいだから・・・・。」 ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 このなかに宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら あたしのところに来なさい。以上。 あ、あと水虫です。」 一同「触んなや。」
https://w.atwiki.jp/twitwi_pri/pages/19.html
完結作品 間違いだらけの文化祭 /キョンと佐々木の中学での文化祭の話 Am I father ? /キョンと長門が朝倉を育てる話。いい話だ。 涼宮ハルヒの軌跡 /ハルヒが力を自覚している世界で、キョンと二人でSOS団のメンバーに接触していく話。いかにSOS団が奇跡的な存在かを描く。とくに伏線や展開が凄い、というわけではないが、話が読みやすくまとまっている。それぞれのキャラについて掘り下げている。面白くもあり感動もできる、と個人的には高評価の作品。ラストのキョンのちょっとした妄想がいい味だしてます。 涼宮ハルヒの微笑 /数年後、ハルヒが原因不明の病に倒れるところから始まる。ハルヒを救うためにキョンが時を越え奔走する話。長編ながら多くの伏線をはり、見事に回収していく。そのためか多くの人気を得ている。なので話の展開は非常に巧妙になっていてとても楽しめる。 Short Summer Vacation /キョンが死ぬことから始まる物語 涼宮ハルヒの奮闘 ~しっと団の野望~ ―from 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki /気休めに。ハルキョン、古長にしっとする話。一人身万歳。 長門有希の喪失 朝比奈みくるの最後の挨拶 古泉一樹の親友 ―from From dusk till dawn "三丁偏愛" /三部作。それぞれの別れ?とその後を描いており、小作品ながらうまくまとまっている。 長門有希の暴走 長門有希の暴走-消失 ―by 6-555氏 from 涼宮ハルヒのSS保管庫 予備 /人気作。キョンが長門と関係をもった場合の「涼宮ハルヒの消失」を長門視点で描いていく。暴走-消失は、暴走の設定での消失世界の長門視点での物語。どちらも長門の心情、とくにキョンへの思いを強く描いている。とくに暴走-消失では切なくて感動してしまう。 非単調ラブロマンスは微睡まない ―by kobuneno from ノドアメ /鶴屋さんssの最高峰。とある平行世界で鶴屋さんとラブラブする話。鶴屋さん好きにはたまらない。 作家のキョンと編集者佐々木 ―from 佐々木ss保管庫 /タイトル通りの作品。安心して読める。 朝倉涼子の再生 ―from Novel Station Neo by 仮帯 /朝倉ss。分裂自己解釈アリ。喜緑、長門とともに朝倉の教育を行う。自己解釈だが、うまくまとめてある。 短編 ハマるな危険 /朝倉さん 未完?作品 ループ・タイム ループ・タイム――涼宮ハルヒの憂鬱―― ループ・タイム――涼宮ハルヒの溜息―― ループ・タイム――涼宮ハルヒの消失―― ループ・タイム――涼宮ハルヒの陰謀―― ループ・タイム番外編――雪山症候群―― ループ・タイム番外編――エンドレス・エイト―― ―by 25-41様 from 2chエロパロ板SS保管庫 /気楽に読める作品。原作再構成。目が覚めると一年前だった。 ガール・ミーツ・ガール ―from 涼宮ハルヒのSS in VIP@Wiki /キョンTSもの。女キョンはいいやつ。